NHK、東京大学、TDAI Labが正確な情報発信に向けた共同研究開発を開始(22.4.7)

日本放送協会(以下NHK)と東京大学大学院鳥海研究室、同研究室発AIベンチャー(株)TDAI Lab(東京・中央区、福馬智生代表取締役)は、デジタル時代の放送における正確な情報発信に向けた共同研究開発をすることに合意した。近年では偏った情報しか見られない(フィルターバブル)、類似した情報ばかりを見て考えが偏る(エコーチェンバー)などの影響による、フェイクニュースの拡散や社会的分断が問題視されている。本プロジェクトではユーザーに対して、意見の多様性・情報の信頼性に気付くきっかけを与え、フェイクニュースなどに対して一定の「免疫」(批判的能力)を獲得することを目的とする。

■背景となる課題意識
インターネットの普及により、言論空間は爆発的に膨張し、情報が双方向・リアルタイム・無制限に交錯する時代へ突入している。これら情報過多の解決のため、視聴回数に基づくソーシャルトレンドや個人の趣向に合わせたレコメンドなどが普及している。一方で、偏ったものしか見られない(フィルターバブル)、同じようなものばかり見て考えが偏る(エコーチェンバー)などの影響を強く受けると、フェイクニュースに引っ掛かりやすくなったり、社会的分断が起きやすくなったりすることが指摘されている。

■本取り組みが目指す姿
上記背景を踏まえ、「公共放送コンテンツのオンライン配信を通じた健全な情報空間の形成に関する共同研究」を、NHKと計算社会科学を専門として、インフォメーションヘルスを提唱している東京大学大学院工学系研究科鳥海不二夫教授、最先端のAI技術とそれらの社会実装に深い知見を持つ同研究室発AIベンチャーTDAI Labの三者で行う。

具体的には情報プラットフォームなどからNHKに流入してきたユーザーに対して、トレンドなどだけでは気づかなかった重要なニュースや、意見の多様性・情報の信頼性に気づくきっかけを与えるといった試みを行う。その結果、ユーザーがフェイクニュースなどに対して一定の「免疫」(批判的能力)を獲得することの実現を目的とする。また同時に、NHKの多角的な最新ニュースを読んでもらうことで、さらに理解を深めてもらうことを目指す。

■検討中の機能
・人気となっている話題・情報について、SNSなどから記事・単語に関するデータを集めて分析し、情報発信者がスパムアカウント(偽物)である割合や、意見の分断があるかどうか検知
・NHKの最新ニュースと合わせて提示し、どのような受け止められ方をしている内容か分かるようにする
・その結果、以下の気づきを与える仕組みを検討中。
① 信頼性の課題や意見の分断などへのアラートにより、一方の意見にばかり偏った記事・発言や、誤った記事・発言が多く流布していても(フェイクや仕込みなど)、バランスよく読み解くことを可能にする
② 状況によっては、情報・意見を正確に理解できるようにするニュースを追加

■NHKが実施する社会実証について
インターネットを通じたコンテンツの視聴が進む中、テレビを持っていない人に対してNHKのコンテンツをインターネットを通じて届ける意義やニーズを検証する必要があるとして、NHKは社会実証を4月以降、1回あたりで最大3,000人規模、最大3カ月程度の期間で複数回実施する。本プロジェクトはそれら社会実証の一環として行われる。

詳細リンク:https://www.nhk.or.jp/net-info/social_proof/

■「TDAI Labについて」
当社は2016年11月創業、東京大学大学院教授鳥海不二夫研究室(工学系研究科システム創成学専攻)発のAIベンチャー。次世代AIの基礎研究およびその事業化を行なっている。同大学院にて博士課程を修了した福馬智生が代表取締役社長を務めており、研究成果が広く活用されるよう導入支援も行なっている。