ティーピーリンクジャパン(株)
新製品の壁埋め込み型Wi-Fi 7 AP「EAP720-WE」
集合住宅の既設回線でも 2.5GbpsのWi-Fi 7の利用が可能
ティーピーリンクジャパン(株)(東京・千代田区、Simon社長、以下TP-Link)は「ケーブル技術ショー2025」に新製品の壁埋め込み型Wi-Fi 7アクセスポイント「EAP720-WE」を出展する。集合住宅の既設LANケーブルを活用して2.5GbpsのWi-Fi 7の通信環境を各部屋に提供できる製品で、LANケーブル更新や光ファイバー敷設をすることなく今後5~7年間に必要な通信の高速化に対応できる。ケーブルテレビにとっては、集合住宅への強力な商材として期待できる製品が登場した。

木下裕介 氏 ティーピーリンクジャパン(株) 法人代理店営業部本部長
01配線工事のコストをかけずに2.5Gbpsへ高速化
今日、ユーザーは1Gbpsの通信速度では満足しなくなってきている。そのため、各メーカーからWi-Fi 7対応デバイスが登場しているが、10Gbps対応のLANケーブルを使用するハイエンド製品が多い。「10Gbps対応のアクセスポイントについては、新築の建物で高性能LANケーブルを敷設できる場合には問題ありませんが、既設の建物でCAT.5EやCAT.6が敷設されている場合は、太いCAT.7やCAT.6Aに入れ替えるのは不可能な場合もあります」(ティーピーリンクジャパン(株) 法人代理店営業部本部長の木下裕介氏)。
ケーブルテレビ事業者にとって、既設のアパートやマンション、寮などは重要なターゲットだが、そこにWi-Fi 7を導入するのは難しいのが現状だ。既設の配管に光ファイバーを入れ替えれば、GPONで2.4Gbps、将来的に10Gbpsを提供できる。だが、光ファイバーへの更新は費用も大きい。どの方式でリプレイスするのがよいか、ケーブルテレビ事業者の悩みは大きい。
この課題に、一つの答えを出したのがTP-Linkだ。6月に発売した新製品のコンセント埋め込み型Wi-Fi 7アクセスポイント「EAP720-WE」は、既設のCAT.5EやCAT.6のLANケーブルを使用し、Wi-Fi 7で2.5Gbpsのアップリンクと1Gbpsのダウンリンクを可能にする。2.5GbEアップリンクポート×1と1GbEダウンリンクポート×1を搭載しており、マルチギガビットイーサネット環境での運用ができる。もちろん技適マークを取得済みだ。
マルチギガビットイーサネットのスイッチも発売した。8ポートから24ポートの製品を用意。既設のCAT.5EやCAT.6を使用可能なWi-Fi 7のアクセスポイントとスイッチを揃えたことで、ケーブルテレビ事業者が既設の集合住宅や寮の各個室へ2.5Gbpsの通信環境を提供することが容易になった。
「EAP720-WE」は、既設のLANケーブルを活用できるため、配線工事のコストをかけずに2.5Gbpsへの高速化が可能だ。「ケーブルテレビ事業者は集合住宅の通信設備のリプレイスで次の5年~7年を戦っていくことになりますが、CAT.7を敷設できないといった制約からリプレイスしても実効速度は1Gbps程度で、『ギガからギガへの移行』となり、リプレイス前と大して変わりません。『EAP720-WE』の導入でコストをかけずに2.5Gbpsに高速化すれば、『ギガからマルチギガへの高速化』となり、次の5年~7年を既設の回線を活用して戦い抜くことができます」(木下本部長)。ケーブルテレビ事業者は、集合住宅に魅力的な提案をすることが可能になる。

Wi-Fi 7アクセスポイント
「EAP720-WE」

Wi-Fi7アクセスポイント
「EAP772-Outdoor」

Wi-Fi7アクセスポイント
「EAP725-Wall」
02根強いニーズの壁面埋め込み型を開発
「EAP720-WE」はJIS規格準拠のマウントによる壁埋め込み型の情報コンセントに一体化されているのも大きな特徴だ。Wi-Fiアクセスポイントを情報コンセント内に収めるJI S規格準拠のマウントは、日本国内でのみ使用されている方式であり、過去にはこの方式のW i-F iアクセスポイントを提供していたメーカーも多数存在していたが、Wi-Fi 6の時代に入ってからは各社が一斉に撤退し、TP-Link以外にはわずか1社となった。昨年、そのメーカーもWi-Fi 7対応製品ではJISマウント方式をやめ、壁にベースプレートを取り付けて磁石でアクセスポイントを固定する外付け方式へ移行。Wi-Fi 7のアクセスポイントでJISマウントを継続しているのはTP-Linkのみとなった(2025年6月時点)。
「外付け方式の場合、壁から出っ張っているため邪魔になりますし、なかには勝手に取り外されてフリマアプリ等で転売されてしまうケースもあり、露出していることで管理が困難になるという課題があります。そのため、集合住宅等でのWi-Fiでは、壁面埋め込み型の導入数が多かったのです」(木下本部長)。
TP-Linkの親会社は米国企業。通常、グローバルメーカーは日本市場でしか売ることができない日本独自規格に準拠した製品の開発を避ける傾向にある。しかし、TP-Linkは日本市場における壁面埋め込み型アクセスポイントの需要の大きさを重視し、開発に着手した。
他メーカーが壁埋め込み型を避けるのには、技術的な難しさもある。「消費電力の大きなWi-Fi 7のアクセスポイントでは、放熱しにくい壁埋め込み型の設計は困難です。TP-Linkはプラスチック製ではなく金属の筐体を採用し、熱設計上の問題を調整して製品化に成功しました」(木下本部長)。
03ライセンスフリーの管理ツールで遠隔監視・運用
無線LAN 世界シェア1位( * )となったTP-LinkのWi-Fi製品は、低価格でも知られている。デバイス本体だけでなく管理ツールも低コストで運用できるのが特徴だ。「EAP720-WE」の管理ツールはランニングコストが無償で提供されている。集合住宅や寮で使われている「EAP720-WE」の統一SSIDの配信や遠隔監視・運用などが可能で、運用担当者は現地に赴くことなく、コントローラーを介して遠隔で設定・管理・運用が可能。PoEによる遠隔リブートなどにも対応している。
このような遠隔監視・運用は他社のアクセスポイントでも可能だが、毎年ライセンス費用が発生するケースが多い。TP-Link製品ではコントローラー(別売)は低価格な上、購入後はライセンスフリーの管理ツールで遠隔監視・運用ができるようになる。ホテルなどでは従来、コントローラーのライセンス費用を抑えるため、廊下や天井裏に2~3室ごとにアクセスポイントを設置し、無線の入り具合に部屋ごとの差が出ていたが、TP-Link製品ならライセンス費用を気にせず全室にAPを設置でき、すべての部屋に高速なWi-Fiを提供できる。「ライセンスフリーのコントローラーは、ユーザーにとっては高速な通信環境を享受でき、SIにとっては遠隔管理の作業負担が減り、導入企業にとってはコストを削減できるという、『三方よし』を実現しています」(木下本部長)。
TP-Linkは「EAP720-WE」とスイッチを「ケーブル技術ショー2025」のダイコー通産ブースにて展示する。集合住宅、学生寮・社員寮、ホテルなどに通信サービスを提供しているケーブルテレビ事業者に、既設の配線を活用して2.5GbpsのWi-Fi 7の環境を提供できることを訴求する。そのほか、「Archer」シリーズのWi-Fiルーター、「Deco」シリーズのメッシュWi-Fiシステムの展示、「VIGI」シリーズのセキュリティーカメラの動態展示、「Tapo」シリーズのソーラーカメラの実機展示も予定している。
(*)全世界出荷実績2024年IDC調べ

TP-LinkとTP-LINK
「ティーピーリンクは中国企業なので米国市場では販売できない」という風説があるが、その噂は誤っている。TP-Link Systems Inc(. 大文字と小文字の社名表記のTP-Link)は米国カリフォルニア州アーバインに本社を置く米国企業。中国企業TP-LINK Technologies Co., Ltd(. すべて大文字の社名表記のTP-LINK)とは別会社だ。
もともとTP-LinkとTP-LINKは同一企業で、兄弟による経営のもと、兄が中国事業を、弟が中国以外の事業を担当していた。現TP-Link社長はこの弟だ。しかし、4年前から両社は別会社になった。現在、TP-Linkは開発を米国で行い、プロダクトヘッドオフィス、ファイナンス、そして本社機能をすべて米国に移し、社長も米国本社に常駐。米国企業として再編された。製品は米国防権限法(NDAA)に準拠している。