華為技術日本(株)

高速・低遅延・多数のデバイス同時接続が可能なWi-Fi 7は、スマートシティ化に向けた必須のネットワークだ。そして、スマートシティ化で重要な役割を担うとされているのが、地域密着企業のケーブルテレビ。世界有数の情報通信技術(ICT)およびスマートデバイスのグローバルプロバイダーである華為技術(以下華為)は、Wi-Fi 7でも先頭を走っている。華為技術日本(株)(東京・千代田区、李 飛代表取締役社長)のWi-Fi 7の特長およびケーブルテレビとの可能性について聞いた。

(写真左から)
陶 垚 氏 華為技術日本(株) ICTマーケティング&ソリューション セールス部 ネットワークソリューション セールス部部長
高木圭一 氏 同社 法人ビジネス事業本部 ICTマーケティング&ソリューションセールス部 ネットワークソリューション・セールス部 エグゼクティブプロダクトマネージャー

01高速・大容量・低遅延・多接続 オープンローミング機能も追加

Wi-Fi 7は、Wi-Fi6(6E)をベースに、通信効率や遅延が改善された新たな無線規格。2.4GHz・5GHz・6GHzの3帯域を利用するほか、Multi-Link Operation(MLO)、4096‐QAM変調技術の採用等により、高速・大容量・低遅延・多接続性が格段に向上。最高通信速度はWi-Fi6と比べて4倍、データ容量も大幅に向上しており、AR/VRや4K・8K動画といった大容量コンテンツも快適に楽しめる。
華為技術日本(株)ICTマーケティング&ソリューション セールス部 ネットワークソリューション セールス部部長の陶 垚(トウ ヨウ)氏は、「Wi-Fi 7は、ケーブルテレビ業界にとって大きなビジネスチャンスです。高速・高品質・低遅延のインターネット接続は、顧客満足度やARPUの向上に貢献し、インターネット契約数の拡大にもつながります。実際、中国ではWi-Fi 7導入により新規契約率が20%増加した事例もあります。公衆Wi-Fi、IoT、スマートシティ構築など、幅広い分野で活用が期待され、自治体との連携が強いケーブルテレビ局にとっては、新たなソリューションになるでしょう」と語る。
また、オープンローミング機能の搭載により、一度SSIDとパスワードを設定すれば、対応エリア内で自動的に安全なネットワークへ接続可能。「海外からのインバウンド需要に向けての公衆Wi-Fiとして提供できれば、喜ばれます」と陶氏は語る。

AirEngineシリーズWi-Fi 7

02スマートアンテナで快適な環境実現 AIでトラブル予備軍を把握&対応

そのWi-Fi 7のリーディングカンパニーが華為である。他社に先駆け、2023年末から販売を開始している。同社のWi-Fi 7の特長でまず挙げられるのが、「スマートアンテナ」機能だ。陶氏は「スマートアンテナは、干渉を自動で制御し、かつ使用中のデバイスが多いところに集中して電波を届ける技術。華為には優れた5G技術があり、このテクノロジーをWi-F i 7に活用しています。カバー範囲が30%アップし、少ないAP台数で広いエリアをカバーできます。同社では1台のAPで50~100台のモバイル端末が接続可能。ここが他社との大きな違い」と説明する。

省エネにも長けている。「Wi-Fiは使用時と使用されていない時のばらつきがあります。日中は多数使用されますが、夜になると使用されなくなります。華為のシステムでは、使用状況を検知し、使用されているときはフル稼働し、使用されていない場合には自動でスリープモードに切り替わります。2万台のAPを設置している某大学では、キャンパス内の消費電力が30%ほど抑えられ、電気代が年間約1,500万円削減できました」と語る。

このようにユーザー側でのメリットがたくさんある華為のWi-Fiシステムだが、サービス提供側にも多数のメリットがある。その代表例がクラウド管理「NCE-Campusプラットフォーム」。クラウド上で1システムあたりAP20万台までを一括運用・管理ができる。これまでは、設置されたAP一台一台を個別設定していたが、クラウド上から一斉に設定が可能だ。トラフィックAI技術により、負荷や不具合などを検知するだけでなく、その解決策までを提示する。トラブル予備軍も可視化し、アラートを出す。つまり未然にトラブルが回避できる。また、過去のトラフィック量をAIで分析し、最適なチャンネル分布を自動で作り上げる。「トラブルの9割以上は数分間で解決しますし、接続台数や干渉状況などを分析し、チャンネルを自動チューニングするため、つねに快適なネット環境を提供できます。セキュリティも万全で、不審な端末を検知し、フィッシング攻撃等も防ぎます。エンジニアのスキルがなくても対応できます」(陶氏)。

拡張性にも優れている。「『NCE-Campus』はオープンプラットフォーム。さまざまなAPIを提供し、既存システムとの連携もスムース。そのため新サービス提供に向けてもシステム面での大幅改修や投資を必要とせず、システム開発コストを劇的に減らすことができます。例えば、ユーザーの位置データが取得可能なため、AIによりそのユーザーの行動先を予測して、その人の行動範囲内のデジタルサイネージに観光情報や付随する広告を表示することもできます。Wi-Fi 7にはセンシング機能があり、ユーザーの存在検知ができます。独居老人の在宅確認やリモート健康モニタリングも可能。検知機能を使い、中国ではホテル客室内の電源ON/OFFなどでも使用されています」とし、陶氏は、Wi-Fi 7を用いた新ビジネス領域拡大の可能性を語る。なお、同社ソリューションは、導入コストも安価。「Wi-Fi 7の標準必須特許のうち22.9%は華為。そのため価格面も競争力が相当あります。他社のWi-Fi6よりも安く提供できる」(陶氏)。

クラウド統合管理型OpenRoamingプラットフォーム

03BtoB&BtoG向けの専用線提供にも ケーブルテレビにマッチした3つの管理レベル

Wi-Fi 7の活用で、華為が推すのがBtoB&BtoG向け“専用ネットワーク”だ。同社 法人ビジネス事業本部 I C Tマーケティング&ソリューションセールス部 ネットワークソリューション・セールス部 エグゼクティブプロダクトマネージャーの高木圭一氏は、「ケーブルテレビの強みは、地域密着ビジネス。Wi-Fi 7は、行政が運営する施設のインターネットの高速化はもちろん、河川監視カメラ、水位センサー、スマート農業、保育園、教育施設でのIoTなど、さまざまな分野で活用できます。ローカル5GによるIoTが注目されましたが、高額な初期費用のため断念したり、規模を縮小するケースもありました。しかし、華為のWi-Fi 7ならば、ローカル5Gの数十分の一、数百分の一の設備投資額で、ローカル5G以上のネットワークができます。4K映像も安定して伝送でき、球場やスタジアムからの映像伝送も可能。公衆網とクローズドなネットワークが同時に提供できます」と語る。

華為のWi-Fi 7ソリューションは、ケーブルテレビ業界の特徴にもマッチしている。その理由は、「システム運用者」「サービス提供者」「テナント利用者」と、3つのレベルの管理権限を定義できることだ。MSOで例えるならば、統括運営会社が「システム運用者」となり、「NCE-Campus」を含むシステム全体を運用するために必要な権限を持つが、どのようなユーザーがどのようなトラフィックを流しているか、などサービスの内容には関与できない。地域のケーブル局は「サービス提供者」となり、「システム運用者」から割り当てられたリソースの範囲で独自のサービスメニューを作ってユーザーへ提供することができる。複数の「サービス提供者」が同じシステムを共有するが、他の事業者のユーザーやトラフィックの情報などは閲覧できず、完全に独立性が保たれる。イベントホールや球場、学校などWi-Fi 7システムを導入する施設が「テナント利用者」となり、自身でネットワークの監視や設定変更を行うことができる。「この3レベルの管理により、MSOやグループ局単位での活用はもちろん、ケーブル局が他社のケーブル局にリセールするかたちでも運用可能です。ケーブルテレビ業界は競合しないのが特徴。ひとつのシステムをシェアし高速ネットワークを構築できる華為のシステムは、ケーブルテレビ業界に適しています」と語る。光ネットワークによる高速化を実現したケーブルテレビ。今後はWi-Fi 7での無線高速化を図る。その際、スマートシティ化を実現してきた華為は、きっと大切なパートナーとなるであろう(なお、華為のWi-Fi 7ソリューションは阪神ケーブルエンジニアリング(株)などから提供されるクラウド型のサービスとして利用することもできる)。

華為技術日本株式会社 TEL.03-6266-8008