JAXA認定の宇宙ベンチャー「天地人」、電波資源拡大のための研究開発について経過報告(21.5.21)
JAXA認定の宇宙ベンチャー(株)天地人(東京・港区、櫻庭康人代表取締役)は、国立研究開発法人情報通信研究機構、国立大学法人東北大学、三菱電機(株)と共同研究開発チームを編成し、総務省が令和2年度から実施している「電波資源拡大のための研究開発」における提案公募に採択されたことを発表した。
採択されたプロジェクト「電波資源拡大のための研究開発」は、5年計画で進め、年度が変わるごとに継続可否が判断される。今回は、2年目の研究開発の承認、および令和2年度の成果について報告した。
■ 研究開発課題の背景
近年の社会経済活動のグローバル化・多様化に伴い、空や海における広範な活動領域でのブロードバンド環境や、地上においても携帯電話網や光ブロードバンドのエリア外におけるネットワークなどへのニーズに基づき、衛星通信への期待が増大しつつある。
また、大規模災害時において、陸上移動通信システムが復旧するまでの補完システムや、緊急通信システムとしての衛星通信のニーズも高まっている。
本研究開発は、技術試験衛星9号機(ETS-9)に代表される次世代のハイスループット衛星を用いた衛星通信システムにおいて、5G網など地上の通信システムと円滑な接続を実現しつつ、周波数リソースをより効率的に利用するための仕組みの構築を目指すもの。
総務省の委託研究「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」はいくつかの研究開発課題から構成されるが、天地人が所属するチームは、「多様なユースケースに対応するためのKa帯衛星の制御に関する研究開発」の一部である「予測技術を活用した衛星通信システムの運用計画作成技術」に関する研究を行い、その成果が期待されている。
研究開発が進むことで、通信衛星にとっての航空機渋滞予測や降雨予測を行う。例えば、航空機がどこを飛んでいるかを予測することで、航空機の混雑エリアに人工衛星から通信を割り当て機内のWi-Fiを高速化したり、地上局に通信を割り当てる際に、雨が降っている地域を避けることで、地上局における受信電波強度を高くすることなどを実現する。
■株式会社天地人の役割
周波数リソースの効率化には、回線条件や通信需要の変化をデータ解析に基づき予測を行い、衛星リソースを適切に割り当てる運用計画方式を確立することが重要。
天地人は、特許技術の土地評価エンジン『天地人コンパス』やAI技術(機械学習技術)を活用し、気象状況予測サブシステムならびに移動体需要予測サブシステムの研究開発を担当している。
■「令和2年度における電波資源拡大のための研究開発」の成果
令和2年度は、気象状況予測サブシステム・移動体需要予測サブシステムに用いるデータベース・アルゴリズムを選定し、設計を完了。加えて、クラウドサーバ上にサブシステムの試作を構築。過去データを用いた機械学習・確率推論アルゴリズムの構築も完了し目標を達成した。
また、欧州や日本の人工衛星運用・衛星地上通信事業者へのインタビューを実施し、研究開発の先進性・有効性を確認。3年目以降の商用化に向けた動きも確認した。
宇宙開発ベンチャーのSpaceXや、Amazon など多数の企業が人工衛星による、インターネット環境のない地域への通信の実現や、インターネット通信の高速化を計画している。本プロジェクトの成果を、これら企業の通信衛星の運用計画に活用することで、より効率的に広範囲・大容量の通信を割り当てることが可能となる。
■特許技術の土地評価エンジン『天地人コンパス』
宇宙では絶えず膨大な地球のデータを集めているが、そのビッグデータの中をナビゲートしたいという思いを込めて、『天地人コンパス』と命名。今後、ビジネスにおいて最適な土地は、宇宙から見つけることを提案していく。
天地人コンパス紹介動画:https://youtu.be/uA44Hnl042c
■株式会社 天地人 会社概要
会社名:株式会社 天地人
所在地:東京都港区芝公園1-1-1 住友不動産
代表者:代表取締役 櫻庭康人
事業内容:衛星データを使った土地評価コンサル
サイトURL:https://tenchijin.co.jp/