岡本光正 氏 (一社)衛星放送協会


別次元のメディア競争が始まっている今こそ
コミュニケーションから生まれる新しい発想が必要
数々のチャンネル事業者の社長を歴任されていますが、最も印象に残っているのは。

岡本:ほぼ100%自社制作しているという点で、「囲碁・将棋チャンネル」です。自社で作っていれば、いろいろな事業展開ができますからね。
「囲碁」では、4年ほど前からアマチュア棋士の日中交流を始めています。中国のアマチュア棋士10人を日本に招き、観光や日本の棋士との交流を楽しんでもらい、翌年には日本の棋士が中国に行って、交流を深めています。今年春には初めて日中韓プロの竜星戦を主催しました。「将棋」では、若年層の育成に力を入れていて、「子ども将棋大会」や子ども向けの入門教室等を展開しています。藤井聡太棋士を招いた対局イベントも毎年1回主催しており、おかげさまでチケットはあっというまに完売しています。また、東日本大震災や熊本地震等の被災地には囲碁盤や将棋盤を送りました。そういう意味では、囲碁・将棋のファンそのものを増やすことに力を注いできました。それが専門チャンネルが強くなる上で必要なことだと思っています。

岡本さんがこの30年間で大切にしてきたこと。また、若い世代に伝えたいことは。

岡本:チャンネルのエンドユーザーは視聴者ですが、我々が直接関わるお客様はケーブルテレビやプラットフォーム、つまりB to B to Cのビジネスです。ですから、私自身はB to Bのコミュニケーションをとても大事にしてきました。顔を合わせて直接話すことで、新しく生まれることがたくさんあります。話すことで自分にプレッシャーをかけることもできますし、話した相手から新しい材料をいただくこともある。そうやってコミュニケーションしている時に、新しいアイディアも浮かんでくる。まぁ、一人でじっと考えていても、大したことは生まれませんからね(笑)。
メディア業界の特徴は変化が激しいこと。その変化に敏感であることが、メディア業界の人間には必要ですし、それをキャッチする上でも、やはりコミュニケーションが大事です。ただ、その際には自分の考えも発信すること。相手の話をただ聞くだけではなく、非常識なことや間違ったことでもいい、自らも発することで、交流が生まれ、そこから新しい何かが生まれてくる。これまでの30年間とは別次元のメディア競争が始まっている今こそ、そうやって生まれる新しい発想が必要です。

photo by 越間有紀子


PROFILE 岡本光正 OKAMOTO KOSEI
1955年8月広島生まれ。1979年3月慶応義塾大学卒、同年4月(株)東北新社入社、98年1月同社取締役就任。2003年6月同社執行役員常務、06年同社常務取締役、12年同社取締役上席常務執行役員に就任。並行して、次の役職を歴任。2000年4月(株)スター・チャンネル専務取締役、06年6月同社取締役副社長、04年3月(株)ハリウッドムービーズ代表取締役社長、11年3月(株)ザ・シネマ代表取締役社長、(株)囲碁将棋チャンネル代表取締役に就任。2018年6月(一社)衛星放送協会専務理事に就任、現在に至る。