(株)ケーブルメディアワイワイ
ケーブル局のナレッジ×生成AI
カスタマー対応システム「CATV AIエージェント」提供開始
カスタマーセンターは、顧客と直接やりとりする窓口として、企業にとって重要な役割を担っている。しかし、人手不足や対応品質のばらつきなど、さまざまな課題があり、頭を悩ませている企業は多い。もちろん、ケーブルテレビ業界も同様だ。宮崎県延岡市等をサービスエリアとする(株)ケーブルメディアワイワイ(宮崎・延岡市、福田達也代表取締役社長、以下ワイワイ)は、Kore.aiJapan合同会社(東京・港区、スリニ・ウナマタラ社長)と共同で、AIを活用したカスタマー対応システム「CATV AIエージェント」を開発。ワイワイは、5月27日から国内提供を開始した。ここでは、開局から約30年間のナレッジが結集した「CATV AIエージェント」について取材した。

(写真左から)
甲斐健人 氏 (株)ケーブルメディアワイワイ 事業企画局主任
渡木武道 氏 (株)ケーブルメディアワイワイ 営業局 統括営業部 次長
犬童大郎 氏 (株)ケーブルメディアワイワイ ブランド推進局 局長 兼 事業企画局 局長
013つのAI機能で構成 提案内容もAIがサポート
企業は日々、職場環境、オペレーターの配置、アウトソーシング、マニュアル改善など、さまざまな施策を試み、顧客満足度向上に努めている。もちろん地域密着のケーブルテレビ局にとって重要なファクターだ。(株)ケーブルメディアワイワイ 事業企画局 主任の甲斐健人氏は「今、ケーブルテレビ局にとって、カスタマーセンター等の顧客対応において、『人手不足・高い離職率』『対応品質のバラつき』『繁忙期等でのピーク時対応の限界』『電話、HP、LINEなどマルチチャネルや新技術への対応遅れ』『災害やネットワークインフラの障害による説明や対応遅延&人的対応工数の高止まり』『コスト増加と経営効率』の6つが大きな課題になっています」と語る。
ワイワイもこの6項目の課題へ取り組んできたところ、2021年よりKore.aiと共同で生成AIを活用したカスタマー対応システムの開発に着手し、このほど完成した。それが「CATV AIエージェント」だ。
Kore.aiは、2014年に米国オーランドで起業した対話型AIプラットフォーム&ソリューションの専業企業。OpenAIによる生成AI「ChatGPT」が日本で話題になりだしたのが2022年末から23年にかけて。Kore.aiはそれ以前より生成AIのソリューションの開発を手掛け、従業員の8割が技術者というテクノロジー・オリエンテッドな企業として世界中から高い評価を得ている。
「CATV AIエージェント」は、カスタマーセンター向けに設計された対話型AIソリューションで、「AI チャットボット」「AI 音声ボット」「AIエージェント支援」の3つのAI機能で構成されている。カスタマーセンターで入電を受け、「AI 音声ボット」がまずは対応し、音声データをテキストデータに即変換し、応答がスタートする。その内容から加入希望や解約、トラブル処理などの顧客からの問い合わせ意図をAIが判断し、案内すべき事項を提案する。その際には、「オペレーターにつなぎ、さらに詳しい情報を知りたい」や「SMSやEメール等に資料を送ってほしい」などの提案もする。ここで顧客側がオペレーターと話したいと回答し、初めてオペレーターにつながる。もちろん、オペレーター接続前に完了するケースは多い。

オペレーター対応も「AIエージェント支援」が模範解答をオペレーターのPC画面にテキスト表示し、支援する。「新規加入問い合わせの場合、料金プラン等の説明テキストが画面に表示されます。オペレーターはその文章を先方にお伝えするだけ。お客さまが『Bプランをお願いします』と回答した場合にも、『光回線にするとセット割が適用されますが、いかがですか』など、その後の対話も「AIエージェント支援」が最適な提案をします。『CATV AIエージェント』は顧客管理システム(CRM)と連携可能。CRMの登録情報をもとに、AI側がレコメンドし、FTTH未加入者への加入提案など、お客さまに合わせたご提案が適時、漏れることなく案内できます」と甲斐氏は語る。
なお、SMSやEメールでの情報を希望した場合には、その回答が即座に送信される。HPを一次受付とした場合には、「AI チャットボット」が稼働し、回答する。「HPでの問い合わせもチャットボットを表示するソースコードを1行追加するだけで、WebでのQ&Aが完成します。公式LINE上での対応もできます。『CATV AIエージェント』はAPI接続が可能で、CRMなどのいろいろな外部連携ができます」と同社営業局 統括営業部 次長の渡木武道氏は説明する。WebやLINEでの対応を望む声が増加しているが、ここにも対応できる。
チャットボットやカスタマーセンター対応など、それぞれパートごとに特化したAIソリューションはあるが、電話、チャットボットやLINE、メールなど、顧客接点すべてのチャネルをひとつでカバーするソリューションは珍しい。「3つのAI機能とAPIによる外部連携で、お客さまとの接点すべてをカバーします。トータル的にカバーできるので、顧客対応は根本から解決できるものです」と同社ブランド推進局 局長兼 事業企画局 局長の犬童大郎氏は語る。
02トータルでカスタマー対応を支援 カスタマイズにも柔軟に対応
前述のように、「CATV AIエージェント」は、高度な自然言語処理で、顧客との対話もスムースで自然なコミュニケーションを実現し、複雑な問い合わせにも的確に対応する。ワイワイは、2023年12月から同システムの稼働を自社で段階的に開始。その結果、67%もの人的コスト低減が図られ、スーパーバイザーによる新人教育時間は一人当たり50時間削減できたという。また、バルク物件へのネット機器取付予約システムの自動化にも活用し、入居者自身が設置日時をシステム上から選び、その情報を機器取付班のスケジュールに自動反映させるようにした。結果、人的対応率が91%削減され、受付・取付手配業務時間は52時間削減できたという。「以前は、電話やメール等で希望日時を弊社でお聞きし、内容をFAX等にて取り付け業者に連絡。取り付け業者と調整し、入居者へ連絡したのちに設置工事というスキームでしたが、導入後は、私たちが介在せずに作業が完了、設置時間短縮、顧客満足度も向上しました。夜間については、AI音声ボットによる自動応対により、オペレーターを削減し、相当のコストカットが図れました。また、カスタマーセンターの人員を他部署に異動して力を発揮していただいています」と渡木氏が語るように、「人手不足」「対応品質のバラつき」「顧客満足度向上」「コスト削減」面で大きな成果をあげている。また、「AIチャットボット」「AI音声ボット」「AI エージェント支援」でトータル支援するのが特長だが、それぞれを切り離し、Web対応用、音声ガイドなどとして単独で導入することができる。AIの性能を決めるのは、学習内容の質。Q&Aのシナリオ作成はもちろん、これまでの知見や過去データを学習している同ソリューションは、ケーブル局に特化した応答が行える、まさに“現場力”の結集したソリューションだ。
ワイワイでは、同ソリューションを全国のケーブル局に提案する。汎用性のあるソリューションだが、各ケーブル局のニーズや特色に細やかに対応していく。「問い合わせ内容をCRMへ手打ち入力しなくなるだけでも相当の労力カットになります。OpenAIやGeminiなど、すでに使用されているAIソリューションがあれば、そちらと同じAI が選択可能」(渡木氏)で、カスタマイズにも柔軟に対応する。ちなみに、提案から本格導入までには2~6カ月が必要となる模様。
ケーブルテレビ業界を支援する「CATV AIエージェント」だが、ワイワイでは業界外のサービス事業者や自治体での活用提案も行なっていく。多言語処理能力にも長けているため、「外国人の一次窓口などにも活用可能」(犬童氏)だという。ワイワイは、同ソリューションを7月24日&25日開催の「ケーブル技術ショー」にて展示する。

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