ニューメディア「ロコテレ」
未加入者への接点となり放送と配信を相互送客できる
ケーブルテレビ局の番組を楽しめる動画配信アプリ「ロコテレ」が本サービスを開始して1年が経過した。現在、「ロコテレ」への参加局は36局を数え、常時5,000本が配信されているという。動画配信サービスの利用が拡大するなか、地域コンテンツに特化した「ロコテレ」へのニーズや視聴状況はどうなっているのだろうか。「ロコテレ」を提供する(株)ニューメディア(山形・米沢市、金子敦社長)に、現状と今後の事業戦略を聞いた。
(写真左)中川宏生 氏 (株)ニューメディア常務取締役
(写真右)相庭美華 氏 同 ロコテレ推進部
01ライブ配信「春カメラ」実施 瞬発力と継続性の両コンテンツが大事
── 本サービス開始から1年が経過しました。
相庭:5月1日時点で、21社36局に参加いただいています。現在、JCOM(株)をはじめ6社にお試しいただいており、夏からの導入を決定しているケーブルテレビ局もあります。ロコテレの認知も進み、今年度も参加局は増加するものとみています。
参加する際に課題となるのが、期待できる効果はもちろん、社内体制となります。人員確保や体制構築には準備が必要となるため、参加までには一定の期間を有します。参加しやすい環境を整え、ロコテレ参加への効果を目に見えるかたちで示せるように、運用面のサポートを進めていきたいと考えています。
── ロコテレのコンテンツボリューム感は。参加局からのアップロード数などは。
相庭:全ユーザー向けに公開するコンテンツや、配信ケーブル局の視聴者限定コンテンツなど、アップロード方法はいくつかあり、参加局が選択します。現在、限定公開コンテンツを含めて、約5,000コンテンツが常時アップされています。積極的に活用いただいており、平均1日10作品ほどの新作がアップロードされている状況です。
── 利用回数および利用時間を増やすための施策は。
中川:瞬発力のあるコンテンツと継続視聴いただける両方のコンテンツが必要です。
瞬発力のあるコンテンツの代表がライブ映像で、地域のイベントやお祭り、スポーツ大会などの生中継&ライブ配信などとなります。継続視聴系コンテンツはグルメ番組や、リアルの交通情報が知れる定点カメラ映像など、一定の層に深く刺さるコンテンツとなります。
そこで、3月16日~5月13日までの約2カ月間、『全国縦断!「春カメラ」「春特集」』を実施しました。同企画では、桜やチューリップといった春を感じるスポットのライブカメラ映像を24時間ライブ配信する企画で、10社に協力いただきました。ライブ映像のため、天候等に左右されることもあるため、春が満喫できるベストショットのフィラー映像も13社から提供いただき、特集全体で満開の春を堪能いただけるようにしました。「春カメラ」は、ロコテレのコンセプトである単独では表現できない世界を事業者連携で具現化する特集でした。そこにリアルタイム性という瞬発力を加えたことで、満足度も向上したと思います。
相庭:桜島と桜、姫路城と桜、芝桜の名所、富士山と桜、上田城千本桜などの貴重なライブ映像が毎日配信されました。“春”という横串を刺して、全国各地のコンテンツを一定のボリューム感を持って提供する、まさにケーブルテレビのメリットを活かした企画でした。
アンケートを実施した結果、視聴者からも好評で、約8割の方々から「大変満足」「満足した」との評価をいただきました。なお、アンケート回答318名のうち過半数以上がケーブルテレビ未加入者であり、回答者の60%以上が20代~40代の層で占められており、なかなかコミュニティチャンネル(以下コミチャン)ではリーチしにくい層にお届けできたと思います。
── 視聴者数や視聴時間等のデータ分析への取り組みは。そこから見えてきた気づきなどはありますか。
中川:外部企業と提携し、詳細は視聴データの分析を進め、各局と共有しています。ロコテレIDと個社(ケーブルテレビ局)IDの2つで管理可能であり、ロコテレIDでのデモグラフィックデータをもとにした分析や、特定のユーザーの視聴動向の分析が可能です。
まず、ユーザー数でいうと、iPhone、Androidスマートフォン、FireTV、AndroidTVの順となり、コネクテッドTV(CTV)のボリューム感が増しています。NetflixやTVerのような動画配信サービスがテレビでの視聴時間が増えているように、ロコテレにもその可能性があり、視聴分析でもその結果が出始めています。近年、録画視聴やザッピングが減少し、コミチャンへの接触機会も減少するリスクがありますが、ロコテレは再びテレビに振り向かせる役割を果たせる可能性があるでしょう。
ケーブルテレビは、回線とSTBを提供するビジネスモデルですが、ロコテレならば、スマートフォンをフックにCTVユーザーにアプローチし、サービス提供が可能です。ケーブルテレビの核は、やはり“テレビ”。このテレビに回線契約もSTBも使わずコンテンツ提供できることは大きなメリットです。先ほどのアンケート結果でも過半数がケーブルテレビ未加入者であり、ケーブルテレビ未加入者と接点が持てるサービス。ロコテレは、単純に放送から配信にシフトするアプリではなく、放送と配信の相互送客ができる動画配信サービスです。これまで接点がなかった顧客層にアプローチし、新規契約に結び付けられる可能性があります。 また、ロコテレはハイブリッドキャスト対応も検討しており、これによりアプリのインストール無しでコミュティチャンネルと連動した視聴が可能となります。プロモーションとして専門チャンネルの一部番組をコミュニティチャンネルで放送するケースがありますが、ハイブリッドキャストならば有料サービス加入への導線も構築できると思います。
02ロコテレとの組み合わせでコミチャンの視聴率急上昇
── 実際に効果があった事例などはありますか。
中川:ニューメディア(NCV)米沢にて、米沢市長選挙の公開討論会をロコテレで、開票速報をコミチャンとロコテレで生中継&ライブ配信したところ、開票速報時のコミチャン視聴率は最大15.92%まで上昇し、ライブ配信でも5,000人以上に視聴されました。宮城ケーブルテレビ様からも塩竈市議選をロコテレで配信したところ、非常に良い視聴率を獲得したとの報告を受けています。
相庭:NCV函館センターでは、高校生の部活動紹介番組『青春!ハイスクール』をコミチャンでの放送前にロコテレで先行配信しています。撮影時に先生や生徒たちに放送と配信を行うことを説明し、放送&開始前に番組告知をSNS上にアップすると、高校生たちが自らポストしてくれ、情報が一気に拡散され、視聴率も配信回数も格段にアップしました。
中川:変わった視点でのメリットとしては、自治体に告知いただきやすい面が挙げられます。ケーブルテレビはどうしても有料であり、未加入者と加入者に分かれるため、自治体自身がケーブルテレビのコンテンツをPRすることは難しいケースがあります。しかし、「ロコテレ」であれば、ケーブルテレビ未加入者も視聴可能なため、町の広報誌で紹介いただきやすくなりました。これをきっかけに、自治体と一緒に地域情報に取り組むようにもなりました。
── 1年が経過し、ロコテレならではの効果が発揮されています。今後に向けては。
相庭:「夏カメラ」「秋カメラ」「冬カメラ」と、今年はライブ配信に思いっきり力をいれてやっていきたいと考えています。お祭りや花火大会、マラソンなどのスポーツ大会など、各社から年間の地域のイベントの情報をいただいているので、全国横断で楽しめるライブ配信を企画していきます。これらをフックに、各社共通のプロモーションを実施し、アプリのダウンロード数を増やし、さらなるユーザー数拡大を進めていきます。
中川:すでにさまざまな機能を実装済みであり、時流とニーズに合わせて、新機能を追加していく計画で、広告機能の強化もこれに含まれています。任意のタイミングで広告を挿入することなどができるようになります。このほか、管理システムのAPIを公開することでAPS(Automatic Program System)など、ケーブル各局の他のシステムとの連携を進め、さらにケーブル局が使いやすいシステムにし、より効果的なサービスへと進化させます。