「ドローン無線中継システムを用いた遭難者捜索支援システム」を開発(22.9.22)

ソフトバンク(株)(東京・港区、宮川潤一社長執行役員 兼 CEO)は、国立大学法人東京工業大学 工学院 藤井輝也研究室(以下「東京工業大学」)と共同で、雪山や山岳地帯における遭難者の救助をより安全かつ円滑に行うことを目的に、「ドローン無線中継システムを用いた遭難者捜索支援システム」(以下「遭難者捜索支援システム」)を開発した。

本システムは、山岳地帯など通信圏外のエリアを「ドローン無線中継システム」によって臨時にサービスエリア化するとともに、スマホのGPS機能を活用することで、遭難者の位置情報および捜索者の位置情報を、捜索者や遠隔地の捜索関係者の端末(スマホやタブレット、パソコン)でリアルタイムに確認できるもの。これにより、捜索者の二次遭難の防止に役立つ他、遭難現場での遭難者と捜索者の位置関係などを把握し、捜索を円滑に行うことができる。

「遭難者捜索支援システム」の開発の背景
ソフトバンクと東京工業大学は、雪山や山岳地帯などでの遭難者や、地震などにより土砂やがれきに埋まった要救助者の位置の特定を目的に、「ドローン無線中継システムを用いた遭難者位置特定システム」(以下「遭難者位置特定システム」)の研究開発を2016年から進めてきた。また、本システムは、2021年から消防庁の「消防防災科学技術研究推進制度」の研究課題に採択され、実証実験や試験導入においては、研究支援者である北海道倶知安町の羊蹄山ろく消防組合消防本部などからの協力を受けている。

「遭難者位置特定システム」は、「ドローン無線中継システム」により、山岳地帯などの通信圏外のエリアに臨時にサービスエリアを構築し、スマホに搭載されているGPS機能を活用することで、雪崩や地震によって雪や土砂に埋まった遭難者が持つスマホの位置情報を、モバイルネットワークを介して捜索者や捜索関係者に提供するもの。遠隔地から目視外での手動操縦を可能にする「ケータイドローン飛行制御システム」を搭載しているため、モバイルネットワークを介して、遠隔地にいる操縦者が中継映像を見ながら手動操縦することができる。また、遠隔操縦と現地での目視による手動操縦の切り替えや、遠隔操縦中の自律飛行と手動操縦の切り替えなど、捜索に適した柔軟で高度なドローンの運用が可能。

一方で、雪山や山岳地帯における遭難者などの捜索では、遭難現場に向かう捜索者の二次遭難が危惧されている。その対策として、遭難者だけでなく、捜索者の位置情報を捜索関係者などに共有する手段が求められていた。そこで、ソフトバンクと東京工業大学は、捜索者が携帯するスマホにアプリケーションをインストールすることで、捜索者の位置情報をリアルタイムに捜索者および遠隔地の捜索関係者に提供するシステムを開発した。


「遭難者捜索支援システム」の概要
「遭難者捜索支援システム」は、遭難者の位置を特定して位置情報を提供する「遭難者位置特定システム」と、捜索者の位置情報を提供するシステムを組み合わせることで、遭難者と捜索者の双方の位置情報を、捜索者および遠隔地の捜索関係者がスマホやタブレット、パソコンなどの端末でリアルタイムに確認できるもの。本システムでは、捜索者の現在の位置情報に加えて、移動した履歴を併せて記録・表示することができるため、捜索した場所とまだしていない場所を容易に判別できる。また、「遭難者捜索支援システム」では、「ドローン無線中継システム」によって通信圏外の現場に臨時にサービスエリアを構築できるため、捜索者と捜索関係者間の情報伝達手段としての活用が可能。これにより、遠隔地の捜索関係者が位置情報などを基に現地の捜索者に指示を出すことで、捜索者の二次遭難を防ぎながら、円滑に遭難者の捜索や救助を行うことができる。

なお、捜索現場がサービスエリア内(圏内)であれば、「ドローン無線中継システム」を稼働させずに利用できる。また、このシステムは遭難者と捜索者の位置情報を活用することが基本だが、「遭難者位置特定システム」を利用せずに捜索者の位置情報だけを活用して、日常の捜索業務に生かすことも可能。現在、北海道倶知安町の羊蹄山ろく消防組合消防本部では、サービスエリア内の捜索現場において、捜索者位置情報のみを活用する形でこのシステムが試験導入されている。

ソフトバンクと東京工業大学は、「遭難者捜索支援システム」の実用化を目指すとともに、自治体や公共機関、企業と連携し、災害対策をはじめとしたドローンによる社会課題の解決に向けた研究を進めていく。

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