和崎さんは“上質”という言葉をよく使われました。それらの言葉に込めた思いとは。
和崎:上質という言葉で地上波との差別化を図ってきましたが、ここには、勝負するなら“世の中の端”を狙えという僕なりの思いが込められています。WOWOWは2025年の未来に向けた行動指針として“偏愛”をテーマに掲げています。平凡に満足せず、新たな地平を求め勝負することがエンターテインメント、有料放送の世界では重要だと考えます。
「放送の3元体制」を確立したいとおっしゃってますが、その意図は。
和崎:これまでの約60年間の放送の歴史を振り返ると、NHKの公共放送と民放の無料放送の2軸が中心となり、切磋琢磨し日本の放送文化が育まれてきた実感があります。私は、この2軸に、コンテンツの質に徹底的にこだわるWOWOWのような有料放送が加わり、「3元体制」が確立することが放送界のさらなる発展につながると考えています。同時にそのことが、放送と配信の融合が進み、多様なコンテンツの質と量がより求められるこれからの時代において「TVのチカラ」を生かすことにもつながると考えています。
最後に制作者・経営者として歩んでこられ、コンテンツ力を育むために必要なこととは何でしょうか。
和崎:時代とどう向き合うかであり、これこそがマスコミの責任だと思います。東京大会が決定する前に議論を始めたパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ『WHO IAM』は、2020年の先を見据え、“モノ”ではなくて“人間的、社会的”なレガシーとして、共生・多様性の象徴となるものを作ろうという大きな志をもってスタートしています。このようにどれだけ時代の空気や風を肌で感じ、それをコンテンツとして昇華することができるかが問われていると思います。
photo by 越間有紀子
PROFILE 和崎信哉 WAZAKI NOBUYA
1968年京都大学卒業後、同年日本放送協会に入局。1999年同 総合企画室[デジタル放送推進]局長、2003年同 理事を歴任後、2005年(一社)地上デジタル放送推進協会 専務理事をつとめ、2006年よりWOWOW代表取締役会長に赴任。2007年同 代表取締役社長、2010年より(一社)衛星放送協会会長も兼任。2015年WOWOW代表取締役会長。2018年より同 取締役相談役、(一社)衛星放送協会特別顧問を現任。令和元年春の褒章で藍綬褒章を受章。