No.6 MWC2021で垣間見た5Gロボット技術の未来

2021年9月号掲載

世界最大級のモバイル関連見本市「Mobile WorldCongress 2021」開催

新型コロナウイルス感染症の影響で延期されていたMobile World Congress(以下MWC)が、2021年6月28日に約1年半ぶりにバルセロナで開催されました。最新のモバイル関連サービスや技術などが発表されるMWCは、モバイル業界の今後の流れを知るうえで欠かせないイベントです。通常であれば、現地に赴き、様々な展示や基調講演に参加するのですが、コロナ禍のため、今回はオンラインで基調講演にのみ参加しました。
例年MWCで開催されている基調講演では、主要企業の幹部から最新のモバイルサービスや技術など、モバイル業界の最新動向に関する重要な発表が行われます。今年の基調講演で披露されたさまざまな先端技術の中から、5Gのユースケースとして注目される米国大手通信事業者ベライゾンの5Gロボット技術をご紹介します。

ロボットが持つ課題

ご存知の通り、少子高齢化による労働力不足、さらに昨年からはコロナの影響により、様々な産業においてロボット導入に向けた取り組みが加速しています。近い将来、複数のロボットが作業している光景が日常的に見られるかもしれません。ロボットの導入が進む一方で、課題もあります。その一つが、ロボット間の連携です。様々なメーカーが、異なる仕様でロボットを開発しているため、連携が難しいのが現状です。解決策の一つとして、ロボット間連携を可能にするソフトウェアやハードウェアを各ロボットに追加する方法があります。ただし、この方法では、多額のコストや労力を要するという問題が生じます。ベライゾンは、この課題に着目し、今回MWCで5Gとクラウドを活用した新たなロボット間連携技術を発表しました。

ロボットを5Gで共通の「頭脳」(クラウド)に接続

ベライゾンはMWCの基調講演において、異なるメーカーが開発した2台のロボットによるデモを実施しました。写真の通りユニークな形状ですが、これらのロボットには、他のロボットの相対的な位置を認識するための3D空間分析機能が搭載されていません。したがって、両ロボットが同じ空間で作業をすると、連携が取れず、お互いが衝突するなどの事故が起きる可能性があります。ベライゾンは、これらのロボットに5G経由でクラウド上の3D空間分析ソフトウェアにアクセスさせ、ロボット自体には追加のソフトウェアやハードウェアを搭載させることなく、ロボット間の連携を実現していました。ベライゾンは、今回発表した3D空間分析機能だけでなく、ロボット間で作業内容・状況まで共有できる機能など、クラウド上に様々な機能を提供していく方針を示しました。

4本の足がついたロボット(右)と車輪つきロボットが登場

5Gロボット技術にみる「5Gの本質」

5Gはどんな技術かと聞かれると、多くの人が「4Gより大容量・低遅延化、多数同時接続できる技術」と答えると思います。実際、私も5Gの性能を問われれば、同じように回答するでしょう。しかし、5Gの本質は何かと問われれば、それは「クラウド連携」にあると思います。5Gの高速通信が、より活用しやすいクラウド環境を作り出したと言えます。ご紹介したベライゾンの5Gロボティクス技術は、その一例です。今後、5G、クラウド、そしてロボット技術が一層進展すれば、近い将来、日本からロボットでMWCに参加できる日が訪れるかもしれません。期待は高まるばかりです。

最後になりますが、6回にわたる5G Trends、いかがだったでしょうか。5Gの発展は、今後も引き続き加速していくと考えられています。研究員一同、引き続き日々変化する5G技術や新しいサービスの動向を追い続けます。またご紹介するできることを楽しみにしております。ありがとうございました。
中村 邦明(KUNIAKI NAKAMURA)
情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員
専門:最新モバイル技術・サービス動向、国内外ICT動向 血液型:AB型
趣味:モバイルガジェット集め(妻へのデバイス購入決裁申請)

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