No.5 未来の映像消費を想像しよう─Internet of Human(ヒトのインターネット)の世界

2021年8月号掲載

通信技術の進化に歩調を合わせ、デバイスも同様に進歩してきました。この動きは、5G時代においても、はたまたその先の6G時代を迎えても続いていくことでしょう。
iPhoneが登場したのは3G時代の終わりで、その後の4G時代には多様なスマホやタブレットが瞬く間に市民権を得ました。そして、これらのデバイスが映像消費のスタイルを一変させたのは周知の通りです。家庭のテレビでしか楽しめなかった映像が、消費者ひとりひとりの手元に転がり込んできたわけです。
昨今では様々な機器がネットに繋がる、IoT(Internet of Things─モノのインターネット)という言葉もすっかり定着しています。スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスはその代表格で、スマホの機能が更に身近になっています。
筆者はこのような観点から、映像消費を研究する者としてIoH(Internet of Human)に注目しています。デバイスの進化は、映像コンテンツのあり方を今後も変えると思います。今回はこの、ヒトのインターネットの世界を少しだけご紹介したいと思います。
Mojo Vision社
スマートコンタクトレンズ「Mojo Lens」

米国のベンチャー企業Mojo Vision社が手掛ける「Mojo Lens」は、目と一体化するコンタクトレンズ型の極小ディスプレイです。センサーや通信機能まで搭載するというから驚きです。A Rは、古くはドラゴンボールで敵の姿に戦闘力が重ねて表示されるスカウター、近年ではポケモンGOでお馴染みですが、眼鏡型デバイスやスマホのカメラを通して重ねてきた「仮想現実」が、まさに身体と一体化して現実となるわけです。
昨年、日本のメニコンとの協業が発表され、実用化にむけますます期待が高まります。

NextMind社
心を読み取りデバイスを操作

フランスのNextMind社が取り組むのは、脳波を読み取るブレインテックと呼ばれる技術の実用化です。具体的には、人がコンピュータへ命令する「入力」機能が変わることが期待できます。最近ではAmazonのAlexaなどのAIスピーカーが声だけで家電をコントロールできるなどの発展をしてきました。しかし、ブレインテックは声も出さず「思うだけ」で入力ができるわけです。
筆者も米国で体験しました。直径10cmほどの円盤をヘッドバンドで後頭部に固定(注・針などは刺さない)し、画面に映る映像のテンキーを見ながら「押す!」と思うとその数字を入力できたのは驚きでした。ゲームのデモでは、画面に出現する敵キャラを、十字キーを操作することなく「!」と念じると倒すことができます。iPhoneの登場時に、指でのスワイプやピンチインなどの操作に衝撃を受けましたが、NextMindもまた、世界に衝撃をもたらすのかもしれません。

最後に究極のIoHをご紹介します。ドイツやスウェーデンでは、数千人が体内に通信チップを埋め込んでいるそうです。Suicaなどでお馴染みのNFCという通信チップの小型のもので手首に専用の注射器で装着すると、もはやモバイルSuicaなどは不要です。ドイツの「I am ROBOT」というベンチャーがこのインプラント用チップを通信販売しています。安いものでは40ユーロ程度なのですが、さすがの筆者もこのお試しには躊躇しています。

NextMind社によるデモの様子

今回ご紹介したデバイスは海外企業のものですが、いずれも検索するとYouTubeで観ることができます。ぜひIoHの胎動を感じて頂けると嬉しいです。
水野 秀幸(MIZUNO HIDEYUKI)
情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員
専門:次世代メディア、海外ICT動向、国内ICT政策 血液型:B型
好きなコーヒー:グジ・ゲイシャジャスミン