No.1 2021年、5Gはプレミアムではなくなる

2021年4月号掲載

本号から6回の連載を担当する情報通信総合研究所です。5G関連トピックをご紹介していきますのでどうぞお付き合いください。
さて、本号のテーマは2021年の5Gの行方です。既に5Gスマートフォン(以下、スマホ)をお使いの読者も多いと思います。私も昨年3月に5Gが開始されてすぐ、5Gスマホを使い始めました。ただ残念ながら、5Gエリアがまだ狭い上、コロナ禍で外出機会が減ったことで、スマホの5G表示はまだ数えるほどしか目にしていません。端末や契約プランにお金を払い、条件を満たせばハイパフォーマンスの通信が使える、ある種の「プレミアム」なサービスがこれまでの5Gでした。多くのユーザーにとってはまだ身近な存在とはいえないでしょう。しかし、2021年に状況が変わってきました。その変化をもたらしている3つのポイントをご紹介します。

ポイント① サービスエリア
4Gの電波が「5G」に

2021年に「5G」エリアが急速に拡大する見込みです。理由は、現在4Gに用いられている電波で「5G」の提供が開始されるからです(ただし、この「5G」は4Gの通信速度と同程度のサービス)。ソフトバンクは2月に千葉県・東京都・愛知県の一部エリアから、KDD(I au)は春頃に東名阪の主要都市部から、これまで4Gに用いてきた電波(700メガヘルツ等)で「5G」を開始します。これまでの5Gの電波は「遠くまで届きづらい」という性質がありましたが、今後は4Gに用いられてきた「遠くまで届きやすい」電波も使われることで、多くのユーザーの身の回りまで「5G」エリアが拡大します。

ポイント② 契約プラン
新ブランド移行で5G対応に

昨年12月以降、docomoからahamo(アハモ)、auからpovo(ポヴォ)、ソフトバンクからLINEMO(ラインモ)が発表され、3月から提供が始まっています。いずれも月額3,000円未満で20G Bを利用でき魅力的です。これら新ブランドでは、実は4Gだけでなく5Gも利用できます(ahamoであれば、docomoの5Gを利用できます)。月額料金の安さに惹かれて移行したプランでおまけに5Gも利用できるとは、ユーザーとして嬉しい限りです。

ポイント③ 端末

5Gアンテナピクト

5Gスマホを買いやすく

昨年10月発売の5G対応iPhone12シリーズは世界的に売れ行きが好調で、日本でも人気の端末です。新ブランド移行で月額料金が安くなれば、最新iPhoneに買い替えるユーザーも増えそうです。加えて、安価な5Gスマホも増えるでしょう。ソフトバンクが2021年2月に発売した中国Xiaom(i シャオミ)の最新5Gスマホ「Redmi Note 9T」は、なんと税抜1万9,637円でした。安価な5Gスマホは世界的に増加しており、日本でも安く購入するチャンスが増えそうです。

イノベーションの土壌が整い始める

2021年は、キャリアの5Gエリア拡大とユーザーの契約プラン見直しや端末買い換えによって「気が付くと5Gにつながっている」シーンが増えるでしょう。5Gに関心がなかったユーザーもいつの間にか5Gで通信し始めます。そして、5Gの真のポテンシャルである超高速・低遅延・多接続を実現する通信インフラも着実にできあがっていきます。5Gがユーザーに身近な存在となる中、誰がこのインフラを活かしたプレミアムサービスを創造し、5G時代の勝者となるか。2021年も5Gと周辺動向から目が離せません。

水上 貴博 MIZUKAMI TAKAHIRO
情報通信総合研究所 ICTリサーチ・コンサルティング部 主任研究員
血液型:B型 専門:モバイル、放送メディア 好きなスポーツ:ゴルフ、野球

おすすめ