No.5<Part1> (株)Goolight(長野県)

2025年5月号掲載

インタビュー動画はこちらから ⇒ Youtube

第5回< Part 1>: 多目的交流施設「bota」に込められた想い

「挑み続ける業界フロントランナー」はB-magaの新企画として、新たな事業やサービスに挑むフロントランナーを訪問し、その着想から、社内外の調整、システム構築、運用上の課題や成果までをレポートしています。
業界での横展開が加速されることを期待して、B-magaでの記事に加え、WEBページで詳細に解説し、さらにYouTubeChannelでは経営層から企画や技術の担当者に登場いただき、生の声を紹介するというメディアミックスでレポートしています。
多少なりとも、ご覧の皆様の参考になれば幸いです。

今回は長野県須坂市・小布施町・高山村をサービスエリアとする(株)Goolightを訪れ、
Part 1 : 多目的交流施設「bota」に込められた想い
Part 2 : 中長期ビジョン『Challenge 2027』に掲げた目標
をとりあげ、いろいろなチャレンジのきっかけや目的、現在までの進捗状況、苦労話、さらに将来のビジョンなどをお聞きしました。

インタビュアーは一般社団法人日本ケーブルラボの宇佐見正士専務理事にお願いしました。
ご回答は(株)Goolightから代表取締役社長 丸山康照様、 経営企画部 部長 岩下正志様、地域創造部 部長 山岸慎治様、同部 プロモーション課 課長 鈴木ひろみ様にお願いしました。
Part 1,2ともに、インタビューは2025年2月7日、多目的交流施設・須坂市子育て就労総合支援センター(愛称:bota(ぼーた))内の4K対応Goolightオープンスタジオにて同社社員の皆様にご協力いただき、収録させていただきました。

【図1 株式会社Goolightロゴマーク】
Goolightに込められた思い:Goodlight(良い光)=Goolight
皆様の光輝く未来を全力でサポートします。
会社株式会社Goolight
Goolight Co., Ltd.
住所〒382-0077
長野県須坂市北横町1295-1 (シルキービル2F)
代表取締役社長丸山 康照
会社設立昭和60年(1985) 4月25日
開局平成元年(1989) 8月1日
資本金1億9,600万円
サービスエリア須坂市( 峰の原高原を除く)、小布施町全域、高山村全域

【表 (株)Goolight概要  公開ホームページより https://goolight.co.jp/

左から (株)Goolight 経営企画部 部長 岩下正志様氏 同社 地域創造部 部長 山岸慎治氏 (一社)日本ケーブルラボ 専務理事 宇佐見正士氏(インタビュアー) (株)Goolight 代表取締役社長 丸山康照氏 同社 地域創造部プロモーション課 課長 鈴木ひろみ氏
1.botaオープンまでの経緯

JLabs/宇佐見:今日は驚くほど素敵なスタジオ、Goolightさんが運営しているbotaという施設の4Kスタジオからインタビューさせていただきます。
Goolightさんは様々な事業に挑戦されているということで、特に聞いているのは、映像による新しい形の地域プロモーションや海外向けのコンテンツ、広い意味で電力ビジネスなど手がけていらっしゃるそうですが、本日まずお伺いしたいのはこの施設。
多目的交流施設、須坂市子育て就労総合支援センター(愛称:bota(ぼーた))についてオープンのきっかけや経緯などをまず丸山社長から教えてください。

【写真2 左:日本ケーブルラボ/宇佐見専務  右:(株)Goolight/丸山社長】

Goolight/丸山:この施設は今から3年前、2022年の7月にオープンをしたのですが、『須坂市子育て就労総合支援センター』と名前の通り、須坂市から私たちが指定管理の認定を受けて運営させていただいている施設です。
長野電鉄 須坂駅前に少々大きめなビルができてから38年ぐらい経つのですが、1階には商業テナントが入っていたものの、人の流れの変化、人口減少などの影響で客足が途絶えはじめ、ビル1階の商業スペースが空洞化になっていた時期が10年ぐらい続いていました。
以前から駅前の利便性を活かし、私たちGoolightが2階と3階に本社と放送センターを構えていたということもあって、このビルを何とかしなきゃいけないということで、須坂市さんとお話を断続的にしていて、1階スペースを須坂市が購入するのか、私たちが手を入れるのか、第三者に委ねるのかなどの議論をずっと続けていました。

それがいよいよ2018年、9年に機が熟して、「須坂市が望む施策と私たちが望む施策を一つに融合的した施設というものができるのであれば、私たちはここを主体的に購入して活用させていただく準備があります」というお話をさせていただきました。
内閣府の支援等々も頂戴しつつ、市としては子育て支援センターを作りたい、さらに地元の就労支援施設も作りたいということで、これらのミッションを頂戴しながら、私たちが今後実用化できるように、カフェであったり、コワーキングスペース、ミーティングルーム、クリエイティブルームなどを創造し、さらに今日ここで収録をさせていただいているbotaの4Kスタジオも併設させていただいて、より多くの世代の方が日常的に集まれるような交流施設にしていきましょうということで、官民共創でつくり上げた施設になります。

【図 2 多目的交流施設 須坂市子育て就労総合支援センター(bota)フロアマップ】
写真はbotaホームページより:https://suzaka-bota.jp/
2.botaのコンセプト

JLabs/宇佐見:私のような者がフラッとここへ来ると、これが子育て支援就労総合支援センターとは思えないぐらい、いろいろなスペースがあったり、快適な環境があったりしていますが、その辺もう少し詳しくご説明をお願いします。

Goolight/岩下:botaは市の玄関口である須坂駅前に立地していることもありますので、当社としてはにぎわいの創出という役割がやはり一番の趣旨でした。
とにかく駅前をにぎやかにして、街を活性化させて、それを循環させるという期待がありましたので、まず人が集まるスペースをつくりたいということ。
botaを創るときにいろいろコンセプトを考えたのですが、丸山社長からは、「このbotaを最高のサードプレイスにしたいんだ」という話でした。
第1の居場所=自分の家がファーストプレイス、第2の居場所=学校とか職場がセカンドプレイスだとして、第3の居場所つまりサードプレイスはどこなのかな?と問われた時に、すぐ思いつく方もいらっしゃいますが、なかなか思いつかない方もいます。このbotaが目指すのが第3の居場所、サードプレイスです。

ここに来ると何か居心地がいいなというか、本当にここでほっとするなというか、そういった空間創りを念頭にと、まず社長から基本となるコンセプトを掲げてもらいました。

【写真3 (株)Goolight 経営企画部 岩下部長】
3.サードプレイスに込めた想い

JLabs/宇佐見:素晴らしいですね。
サードプレイスというコンセプトで社長が何か裏に秘めていた哲学のようなものはありますか?

Goolight/丸山:やはり多くの人たちは、職場であったり、学校であったり、自分が生きていくためにどうしてもそこで時間を費やさなきゃいけない場所というものがあって、それが一つのPLACE:場所としてありますし、それぞれ家庭があって、それがもう一つの大きな柱ということで、その2つを軸にして人間というのは生きているのですが、でもそれだけじゃなくて、少し憩いを求めていたり、時間に余裕があったり、いろいろなところで感性の強い人というのは、実はサードプレイスといって、自分がホッとしてそこで自分のエネルギーをインプットできるような場所というのを必ず持っているんだという話を聞きました。

東京とか都市部に行くと、そういう場所というのは結構いろいろあるので、おそらく公園だろうがパブだろうが、喫茶店、レストラン、コンサートホールなどいろいろあると思うのですが、田舎に来るとなかなかサードプレイスと言える場所が見つからない。
そうであれば、この場所が子育て支援センターという軸はあるにしても、そこから派生してお茶が飲める、友達と話ができる、誰とも顔を合わせなくてぼうっと30分ぐらい息がつけるとか、コワーキングで一生懸命勉強をしたいとか、そこで同じような趣味を持った人と会話をしたりとか、いろいろな場所の提供をケーブルテレビができたら非常にすばらしいことなんじゃないかな、と思っていました。

私たちも35年間やっているケーブルテレビの加入はこのエリアの中の50%しかない。残り50%の方と、今後どうやって会社として接点を持っていくか。こういう場づくりの中で、いわゆるケーブルには加入していただいていないんですけれども、ここに来ることによって間接的にGoolightのお客様になっていただくということが、巡りめぐって最終的にはケーブルに加入していただいたり、無線のビジネスに入っていただいたり、さまざまなシーンで恐らく接点を持つことになるだろうと。
そのための準備の場所としても、このbotaというのは効果があるんじゃないかということで、サーブプレスというような言い方をして、まず社員とコンセプトを共有しました。そして、ちょっと格好いい施設をつくろうと、デザイナーも設計者もけっこう凝って特別にお願いしたんです。やっぱり田舎だからこそ、ちょっとイケてる場所をつくりたい。
そういうコンセプトで若い子たちが、「ああ田舎でもかっこいいじゃん」というような場所にしたいなという思いもあって、サードプレイスというのを念頭に置きました。

JLabs/宇佐見:ありがとうございます。
まさにこのサードプレイスの考え方とか哲学、本当に共感、共鳴します。
特に丸山社長の「ケーブルのお客さんの加入率、今は50%だ。けれども100%対象地域すべての方々にサービスを提供する」という、このような考え方は今までに聞いたことがない発想ですね。
その他の施策で、特色のあるコンセプトはありますか?

4.『働×交×学×育』の融合

Goolight/岩下:子育て就労総合支援センターですが、もう一つのコンセプトが、『働く』、『交わる』、『学ぶ』、『育てる』という異なるカテゴリーをそれぞれを掛け合わせて『働×交×学×育』に融合するということになります。
よくある公共施設ですと、それぞれのカテゴリーがばらばらで運営していますが、折角イチから創る施設でもあったので、このそれぞれ全然違うカテゴリーを一つの空間に入れることによって、例えば“育てながら働く”ですとか、“交わりながら学ぶ”ですとか、そういったいろいろ掛け算ができる施設というコンセプトで作った経緯があります。

【図 2 botaのコンセプト 『働×交×学×育』 botaホームページより】

JLabs/宇佐見:ありがとうございます。
そして、現在の利用状況とか利用された方からどのような声が上がっているか、具体的なお話とか、さらに苦労話とかもあればお願いします。

Goolight/岩下:現在、月間1万人程度の方にbotaにお越しいただいています。
おかげさまでオープン以来、年々多くのお客様にお越しいただいて、リピートでお越しいただく方もいれば、初めてこちらへお越しになる方もいらっしゃいます。
今までこの須坂駅前シルキービルの1階、先ほどお聞きのとおり、10年ぐらいずっと真っ暗なところだったのが、お客様がbotaに入った瞬間、こういった素敵なデザインを見て、「ワー!」っていう声が本当に聞こえるんですよ。
そういった意味でも、やはりスタッフのモチベーションは非常に上がります。逆に言うと、それにしっかり応えなきゃいけないということで、カフェの運営はじめ、お客様をしっかりとおもてなしする。そういったところを常に念頭に置いて、仕事をさせていただいています。

そして、やはり一番はbotaホールというところが一番メインのスペースになっておりまして、季節に応じたおすすめの絵本700冊ほどを自由に読める空間が人気を集めています。
さらにカフェの方でも毎月新しい限定メニューを出したり、とにかくお客様に飽きさせないというか、そういった工夫は常にさせていただいております。
新しいものを生み出すというか、苦労ではないんですけれども、そういったところが大変であり、楽しいというか、そんな形ではあるかと思います。

【写真4 季節に応じたおすすめの絵本が700冊あるbotaホール】

JLabs/宇佐見:そういうお話を聞いていると、「岩下さん、それって、ケーブルテレビ局の経営企画部の仕事なの? ちょっと違うんじゃないかな?」って思ってしまいますね。
それはさておき、出資をされた行政の方々から、どういった反響というか、お声があるのでしょうか。

Goolight/岩下:そうですね、須坂市としてもやはり市の玄関口がこういうふうに生まれ変わったというところは非常に評価をしていただいているのかなと思っています。
もちろん市民の方にもこういった形で提供していくだけでなく、市外の方、須坂市以外の方にもbotaに来ていただいて、須坂にこういったとこがあるんだというのを知っていただいて、ゆくゆくはこの須坂に、特に若い方ですね、子育て支援センターに来られているニューファミリーの方々は、これから家を建てられる際に須坂に建てていただければ、須坂市としてもやっぱり人口が増えますし、そういった意味で、このbotaというのは須坂市としても期待を寄せていただいていると思います。

5.今後の目標

JLabs/宇佐見:ますます市とか行政から期待感が高まっているという状況の中、今後さらに地域発展とか活性化の核としてのGoolightさんとして、どのようなことをやっていきたいというふうに考えているんでしょうか。

Goolight/丸山:Challenge2027という中期経営計画を作った時から位置づけているんですが、官を超える民というんですかね、いわゆる地方自治体の財源が厳しくなってきて、人的なリソースがどんどん専門化していくという中で、今までやってきたことが少しずつ対応できなくなってくる、これは否定できないことなんですね。

福祉、高齢者対策、少子化対策、あるいは道路や橋梁の改修とか、そういう基礎的なことはこれからもしっかり考えていかなければいけないと思うんですが、文化振興的な部分の博物館、美術館の運営であったり、コンサートホールの運営であったり、スポーツの何かいろんなイベントの主催であったりというようなことはこれからも行政が果たしてやっていくべきことなのか?
そこはいよいよ、私たち地域の第3セクターのケーブルテレビがしっかりとご支援していく、あるいは担っていくということがこれから増えていく。そのきっかけがこのbotaの指定管理だと思います。

【写真5 (株)Goolight/丸山社長】

それだからこそ社員に言ったのはしっかりと結果を出そうと、Goolightにお任せしたら、期待以上のものを果たす。月1万人来場者があるという話をしましたが、当初市の成果指標ではその3分の1ぐらいの見込みだったんですが、それに甘んじることなく、やはり多くの方に来ていただきたい。
指定管理のビジネスなので、収入は決まっているものの商用部分では、さっき社員が日々メニューを工夫して、試行錯誤して、いろいろな施策を打っていると言いましたが、実用化していく中で、しっかりと成果を上げていくようなものを煮詰めていこうとか、いわゆる行政ではなかなかそこまで考えられなかったことを私たちがやることによって、より良いものができるなら、私たちはどんどん積極的に提案をしていきたいと思っています。
そして、それが単年度で終わるものではなくて、持続的に会社の経営資源として位置づけられるようなものにしていくというのが大事です。
単年度で動いてもらったから良かったということではなくて、末永くお付き合いができるような、そういう信頼関係を築くことですから。
botaは今年で3年目が終わりますが、そのbotaがどれだけ市民に受け入れられているか?というのが大きな試金石かなと思っています。
引き続き気を緩めずにこの事業をしっかりやって、そこからいろいろ派生的なビジネスが生まれてくるのではないかと思います。

JLabs/宇佐見:なるほど、これからも期待できますね。
本日は複合施設「bota」の企画から運営、さらに今後の目標まで伺うことができました。
(株)Goolightの丸山社長はじめ経営企画部の岩下部長や撮影スタッフの皆様、ありがとうございました。

【写真6】 左から 日本ケーブルラボ/宇佐見専務、(株)Goolight/丸山社長、地域創造部プロモーション課/鈴木課長、地域創造部/山岸部長、経営企画部/岩下部長

【図3 愛称:botaについて botaホームページより https://suzaka-bota.jp/