(株)ニューメディア

進化するケーブル業界のビジネスプラットフォーム

「ロコテレ」4月本格始動!

2022年7月からケーブルテレビ32社が参画してサービス実証が行われていた、(株)ニューメディア(山形・米沢市、金子敦社長)の「ロコテレ」が今年4月より本サービスを開始した。全国のケーブルテレビが制作した地域コンテンツ2,000本以上(2023年3月末現在)が配信され、スマホやコネクテッドTVで誰もが楽しめるコンテンツプラットフォーム「ロコテレ動画」としてスタートしたが、本サービス開始を機に「ロコテレ」に改称、ビジネスプラットフォームとしての機能拡張を進めている。(株)ニューメディア常務取締役の中川宏生氏に、「ロコテレ」の現在地と今後の展開を聞いた。

中川 宏生 氏
(株)ニューメディア
常務取締役

01全国の地域コンテンツを1つにまとめ スマホとコネクテッドTVで視聴

ケーブルテレビ業界初のIP動画配信プラットフォームとして約半年のサービス実証を経て、今年4月1日より本サービス開始となりました。開発の経緯や現在のサービス内容について教えてください。

中川:そもそもはハイブリッドキャストでの動画配信プラットフォームをAndroid TVでも動かせるようにしようと、自社開発に取り組んだのがきっかけです。それができた時点で、当社の金子社長が、全国のケーブルテレビのコンテンツを1つにまとめて全国流通することを思い立ちました。全国でバラバラに放送・配信されているコンテンツを、1つのプラットフォームで手軽に視聴できるようにすることで、総合力でケーブルテレビの良さが広くアピールできるのではないかと発想しました。
おかげさまで、サービス実証では30社以上のケーブルテレビに参加いただき、2,000本以上の地域コンテンツが配信されました。その間に各社と意見交換をしながら改良を重ね、今年4月1日より本サービス開始となりました。「ロコテレ」は、Android TV OS搭載のテレビやSTB、Fire TV Stick、スマートフォン(iPhone、Android)で、プレイストアから「ロコテレ」アプリをダウンロード(無料)していただければ、どなたでも視聴いただけます。現在の「ロコテレ」のダウンロード数を見ると、スマホ版6割、テレビ版4割(うちFire TVが3割、AndroidTVが1割)となっています。テレビ向けアプリのダウンロード数ではFire TVが多く、視聴者が自前で端末を購入し、テレビ画面でコンテンツを楽しむ環境が整ってきていることがわかります。そういう意味で、「ロコテレ」もテレビにこだわりたいですし、コネクテッドTVでの視聴が主流になるよう働きかけていきたいと考えています。

「ロコテレ」画面例
「ロコテレ」視聴デバイス
アプリのダウンロード

02今の「ロコテレ」は完成形ではない 機能拡張を進め、世界を広げていく

「ロコテレ動画」から「ロコテレ」に改称した理由を教えてください。

中川:「ロコテレ」で扱うコンテンツを、動画だけでなく、静止画や音声も含めたさまざまな地域情報を流通させていこうということから、「動画」を外しました。例えば、地元スーパーのチラシやハザードマップ、ふるさと納税のカタログ等、動画よりも静止画の方が見やすいものもあります。テレビの大画面をデジタルサイネージのように使うことも考えられますし、「テレビを大きなスマホ」と考えることで、もっと世界が広がると考えています。
今の「ロコテレ」は完成形ではありません。これからどんどん機能拡張し、アップデートしていきます。課金システムはできていますので(QRコード決済やAmazon Payとの連動等)、eコマースやライブコマース、ふるさと納税など、ケーブルテレビ業界のビジネスプラットフォームとしての機能を高めていきたいと思っています。
そのためにも、ケーブル事業者が連携していることが、大きな価値になります。単局ではパワー不足でも、連携することでターゲットもエリアも広がります。これまでの枠組みで考えるのではなく、ケーブル業界がスケーラビリティのある世界となるよう、「ロコテレ」が貢献できればと考えています。

「ロコテレ」参画ケーブルテレビ局の声

観光プロモーションで新たな収益を

東京ケーブルネットワーク(株) コミュニティ事業部 冨平 昌宏

東京ケーブルネットワーク(株)(以下TCN)では、「ロコテレ」の実証実験段階から参加し、今年5月から本サービスを開始しました。私たちが「ロコテレ」に参加した理由は、「TCNのエリア外の情報の加入者向け提供と、サービスエリア外へのコンテンツ発信」と「新たな収益への期待」からです。TCNで「ロコテレ」アプリ利用者にアンケート調査を実施した結果、100%の方が「エリア外の情報に興味がある」と回答しました。
TCNとしては、加入者向けに全国の情報をお届けするとともに、サービスエリアである東京都荒川区・文京区・千代田区(あらぶんちょ)の情報を全国へ届けていこうと考えました。また、広告収入等の新たな収益確保も目指しています。これらを考慮し、「ロコテレ」を誰でも利用できるよう無料提供しています。
現在、TCNでは地域密着街ネタ満載の情報バラエティ『あらぶんちょ!』のグルメ情報などを主に、50本ほどを「ロコテレ」で配信しています。本格スタートしたばかりですが、飲食店を訪問するなどの街ブラ系コンテンツが人気です。観光プロモーション等にもつながるのではと期待しています。
「ロコテレ」のユーザー層をみると、YouTubeよりも世代がひとつ上のようです。コミュニティチャンネル、公式YouTube、そして「ロコテレ」でコンテンツを発信し、幅広い世代に対してアプローチし、TCN制作番組への接触機会を増やしていきたいと思います。そして発信力を強化し、自治体及び観光協会や商工会議所などから観光プロモーションを受注するなどし、新たな収益獲得を進めていきたいと考えています。

「ロコテレ」にアップされているTCNのコンテンツ例
「ロコテレ」にアップされているTCNのコンテンツ例

「ロコテレ」を起点に視聴機会拡大と収益化を目指す

(株)ケーブルテレビ富山 クロスメディアセンター 前田 真太郎
(株)ケーブルテレビ富山 クロスメディアセンター 中田 直樹

「ロコテレ」には、実証実験段階から参加しています。その狙いの一つは、自社制作番組の視聴機会の拡大です。若者のテレビ離れが指摘されているほか、若者だけでなくスマートフォンで映像を楽しむケースが増加しています。ケーブルテレビ富山としては、テレビに加えて私たちの番組をスマートフォンでも楽しんでもらいたいと考えております。そしてもう一つは「ロコテレ」というプラットフォームを利用して収益化を目指したいと考えています。この2点を実現するツールとして「ロコテレ」に可能性を感じました。
ケーブルテレビ富山では現在、情報番組、ドキュメンタリー、災害時の啓蒙番組とさまざまなジャンルを160本程配信しています。まずは「ロコテレ」の認知度拡大と皆さまにアプリをダウンロードしていただくことを最優先とし、無料で提供しています。今後は、収益化を実現するための一助としてペイパービュー課金機能を追加いただけると嬉しいですね。
オンデマンド系コンテンツに加えて、ライブ配信機能も実証実験段階から活用しています。これまでに地元のお祭りや地域のスポーツ、自社イベントをライブ配信してきました。実証実験の経験からライブ配信は再生回数も見込めることがわかっており、今後はコミチャンの生中継にあわせて毎月1回は「ロコテレ」でライブ配信を行なっていければと思います。
「ロコテレ」の良さは、「ひとつの動画配信プラットフォームで全国のケーブル局がさまざまなトライアルを実施、それを共有・学べること」と「全国に向けたコンテンツの発信が可能であること」です。地元の祭りを「ロコテレ」でライブ配信する中で、地元出身者で現在は県外に住まわれている方から「祭りを見ることができて嬉しい」といった、たくさんのメッセージをいただきました。自分たちが制作したコンテンツが全国の方に視聴され、地域の活性化に繋がれば、ケーブルテレビ局の地域での役割はもっと大きくなるはずです。
私たちはこれからもさまざまな映像コンテンツをアップ&ライブ配信していくとともに、ニューメディア様にはサブスクサービス、ペイパービューや広告収入の実現に向けて、よりサービス機能の強化をしていただけることに期待したいと思います。

「ロコテレ」にアップされているケーブルテレビ富山のコンテンツ例
「ロコテレ」にアップされているケーブルテレビ富山のコンテンツ例

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