「コロナ禍」のケーブルを支えた、柔軟・迅速なオペレーションサービス
2020年初頭、世界中を混乱の渦に巻き込んだ「コロナ禍」。政府による緊急事態宣言発令を受け、「ステイホーム」がある種の合言葉となる中で、宅内生活を支える重要なライフラインを担うケーブルテレビは一層、存在感を増すこととなった。そして、保守・運用支援から調査・設計、設備の構築・導入やシステムの開発・販売までケーブルテレビ事業を手広くフォローする(株)ネットセーブ(東京・港区、円谷重信社長)もまた、縁の下の力持ちとして国民の「ステイホーム生活」を日々、支えていた。
事業者側の状況に応じて柔軟な支援を展開
「新型コロナへの不安が広がりはじめた2月の段階で、複数のケーブルテレビ事業者様から今後の協力・支援の体制について相談する声が寄せられていました。具体的な事業協力がスタートしたのは『緊急事態宣言』発令直前の4月上旬で、全国18局のケーブルテレビ事業者様のコロナ対応後方支援を実施しました」(同社オペレーション部コンタクトセンター長・福地信之氏)。
ネットセーブが支援したのは、各局のコールセンター受付業務の拡大だ。
通常、ネットセーブでは「24時間受付対応」をエンドユーザーに提供すべく、ケーブルテレビ事業者の営業時間外におけるコールセンター業務を受け持つ。例えば9時~18時を事業者側の営業時間とするならば、ネットセーブが18時~翌9時という裏の時間帯をカバーするという仕組みとなる。
今回、緊急事態宣言発令に伴う事業者側の営業時間変更に伴い、カバーする範囲を事業者の要望に応じて、随時、柔軟に広げた。たとえば、営業時間を11時~17時に短縮した事業者に対しては、17時~翌11時をネットセーブが受け持った。
「(ケーブル事業者の)営業時間内においても、一部の問い合わせはこちらで受け付けられるように対応していました。時間短縮だけではなく、スタッフも減らして対応していた事業者様が多かったため、できる限り我々も柔軟に対応できるよう努めました」(福地氏)。
早い段階で相談の声を受けていたとはいえ、これだけの「支援拡大」を実質的なリーディングタイムなしで導入した実績はみごとの一言だ。「いますぐできることで協力してほしい、というのが大半のご要望でしたので、そうした声にお応えした形です」(福地氏)。
緊急事態宣言下、感染者ゼロで乗り切ったコンタクトセンター
今回展開された「コロナ対応後方支援」において最も重要な点は、ネットセーブ側のコンタクトセンターに「感染者を出さなかった」ことだ。
「まず、オペレーターのヘッドセットは共用ではなく、一人一台の管理体制に変更しました。加えて、各オペレータブースを仕切るためのアクリル板を設置。出勤者の体調管理・確認を徹底し、感染者への警戒はもちろん、感染拡大の可能性をできる限り排除できるよう努めました。並行して、社内の他部署と感染対策に関する情報共有を行い、不足している対策を積極的に取り入れて、さらに対策強化を図りました。また、不足する物資を部署間で融通し合いながら、社内での感染者を出さないように心がけました。」(福地氏)。
感染拡大対策が広く知れ渡った今日においては基本的な対応にも思えるが、政府の緊急事態宣言発令前の段階で素早く準備を整え、結果的に最大150名以上が電話受付対応を行う職場において感染者を出さなかった事実もまた、賞賛に値する。
「(緊急事態宣言発令後に)事業者様から『ヘッドセットを調達することはできないか』という相談も受けました。各所で持ち回り使用をやめたこと、生産が止まったこともあり、数が足りなくなっていたようです。我々が用意した段階では調達可能でしたが、マスクやアルコールなどと同様、品薄な製品になってしまったのでしょう」(福地氏)。
対応の早さと先見の明が、安定した支援体制の確保につながったというわけだ。
支援体制強化に向けた動きも
5月下旬に緊急事態宣言が解除され、社会は平静を取り戻すべく徐々に動き出している中、ネットセーブは今後、同様のケースにおいて求められる対応について検討を開始している。
「セキュリティの関係上、コンタクトセンターをリモートワーク化することには課題も多くありますが、それも含め、考えていかなければなりません」(福地氏)。
今回の対応においても、将来に向けた布石となる事例は多く積み上げられた。例えば、ガイダンス式による初期対応の無人化だ。普段からネットを使用しない高齢者などからの問い合わせも多いケーブルテレビの相談受付業務において、「最初から人が対応」というサービスは大きな安心感を与える。一方、今回のように対応人員そのものが縮小されるケースでは、相談者となるエンドユーザーをさばききれない恐れも出てきてしまう。「緊急事態宣言が出る直前、支援協力を要請する事業者の数も増えていき、我々も対応しきれない恐れが出てきました。そこで、ガイダンス式の採用による可能対応件数の強化を提案しましたが、提案を受け入れる事業者さんが複数あった反面、逆に支援協力要請を見送った事業者さんもいらっしゃいました」(福地氏)。
さらには「ケーブル業界にも働き方改革の波が押し寄せており、マンパワーを削減しつつサービスの質を確保する必要が出てきています。今回コロナ禍によって時短勤務やリモートワークが増えましたが、働き方改革とも相まって、このスタイルがスタンダードになっていく可能性は高いと思います。ネットセーブとしては、このようなケーブル業界の課題を下支えしていくためにも、サービスの強化を図るさまざまな取り組みを進めています」(福地氏)。
ネットセーブでは、簡単な操作でエンドユーザーへの対応方法を引き出せるオペレータアシストシステムを導入予定。経験の浅いオペレーターでもベテラン並みの速度で顧客対応ができる取り組みを開始する。
「一連のコロナ対応により、有事の際における対応力の強化は我々にとっても必須の検討課題となりました。コンタクトセンターは現在2セクション用意しており、状況に応じて使い分けられるよう冗長対応を進めていますが、こうした分散化やテレワーク、人材の確保など、いかにサービスレベルを維持しつつケーブルテレビ事業者の皆さんを支援できるか。昨年発生した台風被害への対応も含め、より具体的に検討していくべきと考えています」(福地氏)。
「コロナ後」の社会を見据えつつ、積極的に支援体制を強化していく方針だ。
「コロナ禍」のネットワーク監視業務から見えてきたケーブルテレビ光サービスの現在地
ケーブルテレビ事業者の伝送路設備やネットワークの監視業務を担当する、同社オペレーション部ネットワークオペレーションセンター サブマネージャーの関口大介氏は、今回のコロナ禍について「基本的には通常運用で乗り切りました。委託元担当者の方がテレワークとなったことで、通常時よりも連絡体制が弱くなる一面もあり、障害一次検知、初動対応を担う我々の責任がより重くなったと実感しました」と振り返る。
一方、「ステイホーム」の号令のもと、テレワークの進展、宅内でのIP-VODなどの需要が増大した状況において、「トラフィック監視を行なっていたわけではないですが」という前提の上で「ネットワークに大きな障害が報告されなかった、というのは各事業者様のインフラ強化を感じ取ることができます」と話した。
2020年夏の開催が予定されていた東京五輪をひとつの目標として進んだ感のあるケーブルテレビ事業者のFTTH化が、思いがけない形で「コロナ禍における国民のステイホーム生活」を支えられた、ということだ。
「監視業務では、エンドユーザーとの直接接点はありませんが、局側から寄せられる相談として、IP-VODサービスなどの不具合をサービス提供者につなぐケースは少なからずありました。また、コンタクトセンターとの連携で、エンドユーザー申告から、通信障害が発生していないかなどの問い合わせもあったと思います。つまり、そういうサービスを利用するユーザーがこのタイミングで増大したということ。そうした中で、監視の立場からみてネットワーク自体が負担になるほどの状況に陥っていないということは、それだけ安定したインフラがすでに整備されているということです」(関口氏)。
この先、教育関係やスポーツ、エンタメなど「感染拡大対策」としてネットワークが活用されるケースはより増えていくことが予想される。そうした中でネットセーブが日々細やかな監視業務を行い、その監視結果に真摯に対策してきたケーブルテレビ事業者が、このコロナ禍を支えたと言えそうだ。
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