「CP2 Stone」を新開発!ライブ配信のマネタイズを支援
(株)ニューメディア(山形・米沢市、金子 敦社長、以下NCV)は、米沢をはじめ、函館、新潟、福島でケーブルテレビ事業を展開する。「新たな技術に挑戦する」という基本理念のもと、地域メディアとして、情報通信事業者として、積極的に市場ニーズに呼応するサービス開発に取り組んできた。昨年7月、ハイブリッドキャストを活用した次世代放送ソリューション「CP2(Contents Player for Communication Platform)」を開発し、ケーブル事業者向けに提供を開始した。現在は、「CP2」の拡張機能として、ライブ配信をマネタイズする仕組みを開発中で、間もなくリリース予定だ。イベントが軒並み中止となっている今、収入源の確保に苦しむイベント主催者やアーティストを支援する一手として期待される。開発担当者に詳細を伺った。
コロナ禍の情勢が開発の契機に「気軽にライブ配信できる仕組みが必要」
スマートフォンの普及、OTTの台頭により、テレビ視聴環境は大きく変化した。競争が激化する中で、NCVでは「より多くの人にテレビを見てもらうためには、テレビを情報端末に変えることだ」考え、ハイブリッドキャストの双方向性を活かした新プラットフォーム「CP2」を開発した。「CP2」は、コミチャンがいつでも好きなタイミングで視聴できる「コミチャンVOD機能」、Q Rコードを読み取ることでスマートフォンとペアリングしてリモコンとして活用できる「スマホリモコン機能」などを搭載。ケーブルテレビ局は、「CP2」を導入すれば、番組やデータ放送に動画やアプリケーションを載せて配信できる。視聴者の居住エリアや属性、視聴傾向を分析し、個々の好みにあわせた最適なコンテンツが提供することで、テレビが新たなコミュニケーションツールとなり、加入者と新たな関係を築くことができる。
今年3月から、NCVは「CP2」のキャッシュレス決済機能を用いてライブ配信を行う仕組みの開発に着手した。きっかけについて開発担当者の1人、小林辰也氏は次のように語る。「コロナ禍により、多くの無観客ライブが開催されていますが、主催者と視聴者の双方にとって、もっと気軽に配信・視聴できる仕組みが必要ではないかと考えたのです」。新開発のライブ配信システム「CP2 Stone」は、テレビだけではなく、スマホやタブレット向けの配信も実現する。「全てのスクリーンで新たなビジネス機会を創出してもらいたい、という思いで、さまざまな技術・機器を試しながら開発を進めています」(小林氏)。
イベントが軒並み中止となり、多くのイベント主催者やアーティストは収入源を絶たれ、苦境に立たされている。YouTubeなど、無料の動画配信は盛んに行われているが、マネタイズできていないのが現状だ。「主催者を支援できるよう、いわゆる“投げ銭”のような追加課金機能も実装したいです」と小林氏。NCVでは、6月中に「CP2 Stone」のβ版完成、7月頃の正式リリースを目指している。商品名の「Stone」は、お金の起源である“Stone(石)”をイメージして命名された(*)。
(*)CP2 Stone:Social Tipping with videOstreaming for NExtgeneration(動画配信による次世代型の投げ銭)の文字列からアルファベットを抽出したネーミング。
視聴中に追加支援できる投げ銭“風”サービスを検討
「CP2 Stone」によるライブ視聴に際しては、ユーザー登録などの手続きは不要。視聴したいイベントがあれば、メールアドレス等による本人認証、キャッシュレス決済を行うと、画面上にチケットが表示される。航空会社が発行するeチケットのような利用イメージだ。イベントの開催日時にチケットをクリックすれば、好きなデバイスで視聴できる。テレビで視聴する場合の決済は、テレビ画面に表示されるQRコードをスマートフォンで読み取って行う。スマホやタブレット視聴の場合、PayPay、LinePayなど、主要5~6社の決済アプリの中から、ユーザーが選択して決済する。事業者側にとって、これらの“チケット管理”は煩雑な業務の1つだが、「CP2 Stone」ではチケット管理アプリ「Passbook」を採用し、管理業務の軽減を図る。
なお、投げ銭“風”サービスについては、直接送金ではなく、ポイントやグッズを購入してもらうなど、視聴回数やポイント受領数グッズ売り上げに応じて、配信者を支援する方法を模索。「視聴中になんらかの形で支援が可能な仕組みを設ける予定です」(小林氏)。
「CP2 Stone」でライブ配信を行う場合、事業者はどのような手順を踏む必要があるのだろうか。イベントの規模や告知ページの制作期間、プロモーション方法等により異なるが、ケーブルテレビ事業者の場合、自社でカメラやミキサー等の機材を有するため、「CP2」を導入していれば、追加で用意するのは、ライブ配信用のハードウェアあるいはソフトウェアのみ。最小構成の場合、RTMP規格に対応する機器で映像を「CP2」に飛ばせば、ライブ配信が可能となり、企画決定から数日以内の実施も可能だ。
市販機器またはソフトを併用すればライブ配信が手軽にスピーディに実現可能
ここで、「CP2 Stone」と併用する配信機器について簡単に触れておこう。YouTuberなどが多く使用しているのが、パソコンを使わずにHD画質のライブ配信ができるCEREVO(セレボ)の「LiveShell(ライブシェル)」。カメラからHDMIケーブル1本でLiveShellに接続するのみで使用できる。配信ソフトとしてポピュラーなのが、「OBS Studio」など。これらのハード・ソフトを介して「CP2」にアクセスすれば、いずれも手軽なライブ配信が実現する。「ただし、数万アクセスにも及ぶ大規模イベントの場合、CP2サーバーの負荷を軽減するため、一部AWSの利用も想定しています」(小林氏)。複数台のカメラを導入したイベントの場合も、「OBS Studio」の編集機能で映像の切り換えに対応できる。「LiveShell」を使う場合、ケーブル事業者であれば自局ミキサーやスイッチャーを併用すれば、同様にマルチ映像の配信が可能。ライブのエンターテイメント性が存分に追求できるはずだ。
NCVは、オンライン開催が決定した「ケーブル技術ショー2020」(7/1~8/31)に出展し、「CP2 Stone」の動画デモンストレーションを実施する。小林氏は、「従来のように、自局番組で宣伝するだけでなく、新たな顧客層を開拓する意味でも、SNSを活用するなどWebでの拡散方法を考えていきます」とPRにも意欲的だ。今後は、各種チケットを扱うポータルサイトを構築するなど、幅広いジャンルの視聴者獲得に挑んでいく。
VR配信、360度カメラ映像など、さらに進化するライブ配信の未来
各地域にはライブハウス、演芸場、コンサートホール等さまざまなイベント会場やスポーツ施設がある。ケーブル事業者がネットワークを駆使してライブ配信事業を主催者側に提案し、収益モデルが認知されれば、ライブ・エンタメ市場の発展、地域活性化の一助となるはずだ。全国各地での配信は、新型ウイルス対策ばかりではない。「仕事が忙しい」「遠方で足を運べない」など、視聴者側の障壁を取り除くこともできる。現在、「CP2 Stone」は、地域のライブハウスなどから引き合いが増えているという。「コロナが収束しても、コンサート、イベント、寄席、スポーツ試合などのオンライン開催は増えていくと思います。いずれはオンラインが主流になる時代がくるかもしれません」(小林氏)。
配信事業が成熟すれば、視聴者の楽しみも広がる。7月リリース予定の製品には未搭載だが、「CP2 Stone」では、VR配信についても検討が進んでいる。小林氏は、「観客がアバターとしてイベントに参加できたら、観客同士も盛り上がれて面白い。誰かの“投げ銭”に他の観客が呼応して、相乗効果も生まれるでしょう」と収益モデルの可能性に期待を寄せる。さらに、会場に360度カメラを設置する「多視点映像配信」も視野に入れている。全国どこにいても、さまざまなライブ配信が存分に楽しめる時代が到来した。主催者側は、より幅広いエリア・視聴層をターゲットに企画を練ることができるだろう。
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