第5回< Part 2>: 中長期ビジョン『Challange 2027』に掲げた目標
「挑み続ける業界フロントランナー」はB-magaの新企画として、新たな事業やサービスに挑むフロントランナーを訪問し、その着想から、社内外の調整、システム構築、運用上の課題や成果までをレポートしています。
業界での横展開が加速されることを期待して、B-magaでの記事に加え、WEBページで詳細に解説し、さらにYouTubeChennelでは経営層から企画や技術の担当者に登場いただき、生の声を紹介するというメディアミックスでレポートしています。
多少なりとも、ご覧の皆様の参考になれば幸いです。
今回は長野県須坂市・小布施町・高山村をサービスエリアとする株式会社Goolightを訪れ、
Part 1 : 多目的交流施設「bota」に込められた想い
Part 2 : 中長期ビジョン『Challenge 2027』に掲げた目標
をとりあげ、いろいろなチャレンジのきっかけや目的、現在までの進捗具合、苦労話、さらに将来のビジョンなどをお聞きしました。
インタビュアーは一般社団法人日本ケーブルラボの宇佐見正士専務理事にお願いしました。
ご回答は株式会社Goolightから代表取締役社長 丸山康照氏、 地域創造部 部長 山岸慎治氏、同部 プロモーション課 課長 鈴木ひろみ氏、 経営企画部 部長 岩下正志氏にお願いしました。
Part 1,2ともに、インタビューは2025年2月7日、多目的交流施設・須坂市子育て就労総合支援センター(愛称:bota(ぼーた))内の4K対応Goolightオープンスタジオにて同社社員の皆様にご協力いただき、収録させていただきました。

Goolightに込められた思い:Goodlight(良い光)=Goolight
皆様の光輝く未来を全力でサポートします。
会社 | 株式会社Goolight Goolight Co., Ltd. |
住所 | 〒382-0077 長野県須坂市北横町1295-1 (シルキービル2F) |
代表取締役社長 | 丸山 康照 |
会社設立 | 昭和60年(1985) 4月25日 |
開局 | 平成元年(1989) 8月1日 |
資本金 | 1億9,600万円 |
サービスエリア | 須坂市( 峰の原高原を除く)、小布施町全域、高山村全域 |
【表 (株)Goolight概要 公開ホームページより https://goolight.co.jp/】

1.中長期ビジョン『Challenge 2027』
JLabs/宇佐見:今日は驚くほど素敵なスタジオ、Goolightさんが運営しているbotaという施設の4Kスタジオからインタビューさせていただきます。
Goolightさんは様々な事業に挑戦されているということで、特に聞いているのは、映像による新しい形の地域プロモーションや海外向けのコンテンツ、広い意味で電力ビジネスなど手がけていらっしゃるそうですが、まず丸山社長がイメージする様々な事業の挑戦の形というところを簡単にご説明いただけますでしょうか。

Goolight/丸山:当社は開局36年ということで、多チャンネルによるケーブルテレビ事業が地域のコミュニティを豊かにしていくというミッションで始まったのですが、やはり時代の流れとともにケーブルテレビのビジネスであったり、立ち位置であったり、地域での存在感が変わってきました。
そのような中で当社は2017年、『Challenge 2027』というテーマで、10年後の未来をどう創造するかという中長期のビジョンを社員とともに話をして作りあげました。
その時はまだ、新型コロナウイルス感染症というような大きなパンデミックがなかったので、今ほど大きな危機感ではなかったのですが、人口減少下の中で10年後、おそらく事業は大きく変わるだろうな、ということは漠として感じていたので、これに対してどう立ち向かっていくか、既存のテレビ、インターネット、電話といったサブスクリプションのビジネスは中心にしながらも、新たな事業領域をどう作っていくか、ビジネスとしてどう形にしていくかという議論を進めていきました。
今、宇佐見さんからお話があった地域の電力事業をどうするか、コンテンツも地域のコミュニティだけに放送していることはとても大事なのですが、それ以外に何かビジネスの要素として、僕たちはコンテンツを一つの大きな核としてビジネスに展開していきたい。
さらに、今日お越しいただいているようなbotaという複合交流施設を行政と一緒に作り上げていって、地域の課題解決に少しでも僕たちが支援できればいいんじゃないかというような、様々なところにトライしていく仕組みまで、いろいろなアイデアのベースを社員間で一致させたのが、2017年です。
それから気がつくともう7年ぐらい経っていますので、いよいよ仕上げに向けて、あと3年ぐらいしかなくて、できていないことも多く、本当にきちんとやっていかなければいけない。
そういう流れの中で、実は今お話のあったようなものに少しずつチャレンジしているという、そんな状況です。

ホームページより https://goolight.co.jp/about/challenge
中期経営ビジョン
2027年、Goolightが「地域にとって欠かすことのできない存在」となるために、次のビジョンを達成する。
常に先進のサービスを提供できる基盤整備の確立 | ・高度無線通信基盤の整備 (ローカル5G・地域BWA・LPWA網等) ・伝送路の高速・大容量化 → 完全光化宣言(2022年度完了) ・アプリケーション・データ活用・ID連携基盤の整備・都市OS活用 ・IP放送・IP配信への対応 |
地域の皆様の生活を豊かにするコンテンツの提供 | ・地域コンテンツの更なる充実 → 地域の「魅力」「笑顔」「安心安全」の提供 ・新たな放送プラットフォーム → 4K自主放送 / オンライン配信 / IP自主放送 ・放送・WEB・地域アプリと連動した地域の安心安全(防災・減災)支援 ・地域コンテンツの全国・海外への積極的展開 |
新たなビジネス領域への挑戦 | ・シルキービル複合施設「bota」の運営 (2022年度~2026年度) ・行政・教育機関・企業・病院・中小商店など、BtoB、BtoGへのサービス提供 ・生活支援サービス(電気・ガス小売り、高齢者見守り等)の導入 ・未加入者への通信機器販売、新たな顧客接点の強化 ・全国、広域エリアへのサービス提供 |
人材育成・安定雇用に向けた積極的な取り組みと実践 | ・若手、中堅人材の育成 ・IT技術など新分野における専門性、多様性を持った人材の採用 ・多様なパートナーシップの推進(外部連携・業界連携) |
地域公共財としての使命 | ・防災行政支援としての地域インフラ整備(有線・無線) ・観光・文化・生活支援等、公共事業の委託ならびに更なる連携 ・自治会・区長会との新たな連携 (公民館・公会堂へのインフラ整備、ITスキル推進) |
安定した財務基盤の確立 | ・既存ビジネスでの売上高10億円 ・ 経常利益率10% の確立 |
ニューノーマル時代のサービス転換 | ・IP放送時代に対応したインターネットを基軸にしたサービス提供 (2022年度~) ・多チャンネルサービスの見直し → OTT連携 → IP放送でのサービス提供 ・サービスのワンストップ化 (決済機能の一元化・キャッシュレス決済の導入) ・デジタル(チャネル)マーケティングの導入 |
SDGs達成に向けた実践 | ・ながの電力と連携した再生可能エネルギーの推進 ・高度インフラの整備による質の高い教育支援 (地域DX推進) ・地域コンテンツによるまちづくり → 魅力ある地域の映像・番組発信 ・安心安全の町づくり支援 → 「住み続けられるまちづくり」に向けて |
ホームページより https://goolight.co.jp/about/challenge
JLabs/宇佐見:お話を伺いますと、7年前から、今起きているかなり大きな変化に対する危機感を持ち、その延長に、こういういろいろな事業があるというお話でしたけれど、そうは言っても、多チャンネル、STB、それから放送、それからいわゆるテレビを見ていただくようないろいろなコンテンツも含めてモバイルが入ってくる。
通信がどんどん進化するみたいな方向で、多くの場合は対応策を考えがちだと思うんです。 でも、そこをGoolightさんのお考えはかなり突き抜けていて、もちろんその変化は乗っていかなきゃいけない、でも一方で、例えばインバウンドでこの地域を盛り上げるとか、そのやり方とか広げ方が他の事業者に比べてすごくアグレッシブに進めています。
あと3年ぐらいとおっしゃいましたが、10年計画のゴール地点というのはどんなイメージを持たれていますか。
Goolight/丸山:僕たちは地方の中小の事業体ですので、先進のいろいろなソリューションを、きちんと進める、例えば光化をきちんとやる、無線事業にも向き合っていくということをやりつつも、マスとしては大きな地域を持っているわけではありませんので、広く浅くではなくて、深くどんどん地域に入っていくということがGoolightの強みと思っています。
ですから、コンテンツというのは一つの大きな柱でもありますし、自治体といかに信頼関係を築いて、官が今後できないような、例えば文化芸術、スポーツ振興みたいなところにケーブルテレビがしっかりとサポートをしていく。少子化対策なんかについてもベースのところは自治体が考えることだと思いますが、地域のブランディングをすることで、巡りめぐってその地域に定住移住を呼び込むみたいなところの戦略は、実は全国の仲間がいるケーブル事業者にとっては得意な部分ではないか。
そういう観点で、どちらかというと大きなマスを持っていないがゆえの僕たちの特性を生かした事業展開というのが、他と少し違ったということで言えば、違っているかなというふうに思います。
JLabs/宇佐見:ありがとうございます。丸山社長のビジョンの一端を伺えた気がします。
ここから少し具体的に社員の皆さんのお話しも聞きながら進めましょう。
地域プロモーションについて少し具体的にお伺いしたいと思います。
今までどのような試みをしてきて、その成果、アピールポイントなどをあげていただければ幸いです。
2.須坂市のシティプロモーション事業
Goolight/丸山:2012年から、私たちGoolightは須坂市のシティプロモーション事業を受注させていただきました。
皆さんの地域にも観光協会だったり、コンベンションビューローだったり、いろいろ組織があって、それぞれ活躍されていると思います。
須坂市観光協会のオフィスは会社の隣にあるんですけれど、その観光協会が地域のいろいろなイベントであったり、コミュニティ活性化の活動をやっていて、須坂というのはそれほど世界に誇るような観光地がないものですから、むしろ暮らしに密着した観光ということで、地域の食べ物のおいしさだったり、空気の新鮮さだったり、暮らしていく上でどうだというような部分を映像でしっかり私たちは撮って、全国、世界にアピールするという役割を担当させていただいています。
それから、長野県の仕事をしたり、海外のインバウンドサポートをやったり、いろいろな展開をしてきました。
去年、地域創造部という地域を創造するセクションをつくって、メディアとプロモーションの業務を合体して、地域の課題解決を一緒に考えていこうという組織になりましたので、その部長と課長が今日います。具体的にどんな取り組みをしているかというのは二人から話をしてもらいたいと思います。
JLabs/宇佐見:お願いします。
そうですね、具体的なお話を伺えればと思うんですけど、その中にもクライアントさんならではの強みはどこにあるかみたいなところも含めて、具体的なお話をお願いします。

Goolight/鈴木:今、丸山社長からお話がありましたとおり、映像のコンテンツを使ってプロモーションができるというのは、間違いなく私たちの会社の強みだなというふうに思います。
しかも、『須坂市ってこんなところにあるよ、こういったら行けるよ』のような、普通の案内をただ丁寧に、ある意味親切なVTRではなくて、世界的なアーティストとのコラボレーションから生まれるような、映像の印象にインパクトがあったりとか、そういったものをきっかけに、映像を観た方が能動的に「あれ、これどこにあるの?この場所ってどこなの?」と言って、「須坂市って何だろう?」って調べていただけるような、そうしたVTRを制作させていただいています。
第1弾が田中泯さん。俳優で舞踊家、舞踏家の田中泯さんの映像を作らせていただきまして、その時にも本当に場所がどこかなども出していなくて、最後に須坂市の市章がぽんと出てくる、そんな映像になっています。(注1)
田中泯さんが八丁鎧塚古墳という長野県指定史跡である須坂市の文化財を見て踊って、その場を表現していただいたような踊りの映像になっています。
(注1)
【田中泯、北信濃を踊る。(2020年制作)】
https://goolight.co.jp/movie/tanaka-min

世界的に活躍する舞踊家・田中泯さんが、北信濃飯山市小菅と、須坂市にある長野県指定史跡「八丁鎧塚古墳」を舞台に表現する「場踊り」を4Kで撮影しました。
また、関連作品として、CMやPV制作、YouTube 配信などの多彩な展開が評価され、ケーブル・アワード2021第14回ベストプロモーション大賞でグランプリに輝きました。
Goolight/鈴木:それに続きまして、二山治雄さんといって、長野県出身のバレエダンサーで、ローザンヌ国際バレエコンクールで日本人男性として2人目の優勝を果たしているダンサーの方なんですけれど、この方に米子大瀑布という国の名勝指定になっている米子瀑布群で踊ってもらいました。(注2)
実は丸山社長が米子瀑布群で踊ってもらおうよって言った時に、私たちは「エッ、踊れるのかな?」と思いました。
最初は舞台とかを用意して、そこで踊るのかと思っていたら、やはり二山さんの方もその場を感じて、大自然の米子に圧倒されながら踊っていただいた。
その時、本当にその場の空気を感じながら踊ってくれたので、その状況もコメントしていただきまして、そういった舞台裏のドキュメンタリーなども制作させていただきました。
(注2)
【信州須坂米子大瀑布×二山治雄】
https://goolight.co.jp/movie/信州須坂米子大瀑布x二山治雄

須坂市から受託する「米子大瀑布デジタルプロモーション事業」の一環で、国指定の名勝「米子大瀑布」を国内外に広くプロモーションをするため、長野県松本市出身の世界的なバレエダンサー「二山治雄」を起用し、4章立ての映像作品を制作しました。
二山治雄(にやまはるお)さんは長野県松本市出身のバレエダンサーで、スイス・ローザンヌ国際バレエコンクールで日本人として3人目の優勝を果たしました。
JLabs/宇佐見:ありがとうございます。
本当にワクワクする、そういう作品を作られたという気がしますけれども、これは恐らく社長の思いはもちろんあるとして、社員の皆さんの苦労とか、あるいはこれを作り上げるための何か難しかったところなど。他局もこういうのを参考にして、やりたいと思った時に簡単にできるわけじゃないでしょうし、その辺のお話も伺えたら、お願いします。 Goolight/鈴木:実は意外と私、苦労したことはなかったなと思いました。 ただひとつ心配していた点がありまして、自然を相手にしているので、特に米子大瀑布、10月26日に撮影したのですが、紅葉の時期が年によって違うので、本当にいい時期に撮影ができるのかどうか?だったり、天候ですね、寒い時期になってきます。
その時も二山治雄さんは上半身裸で踊っていただいたので大丈夫かな?とか、そういったものを心配していたんです。
観光のトップシーズンでもあったので、お客さまの来ている場所での撮影というところも心配していました。
ドローンでの映像であったりとか、日光の入り具合ですね。米子の方が午前中から来るとどうしても日陰になってしまうので、そういった光のコントラストは大丈夫かなというところはありましたが、本当に日光が、今回は私達に味方してくれまして、神々しい光を含んだ素晴らしい映像が撮ることができました。
天候まで味方をしてくれたことがすごく有難かったなと思います。
また撮影技術の部分では、今回はログ方式の撮影(注3)をしたのですが、色の濃淡を数値化して保存するような撮影の方法で、後からの加工も可能な形をとりました。
その辺も今まで会社として培ってきた技術であったり、そういうものにチャレンジした経験があったからこそ取り組めたことかなというふうに思っております。
(注3)
【ログ方式の撮影】
カメラが捉えた映像のダイナミックレンジを最大限に活かす撮影手法で白飛びや黒潰れを抑え、色補正や色付け(カラーグレーディング)がしやすい。Log(ログ)は「Logarithmic(対数)」の略で、光を対数関数でデジタル化した記録方式を指す。
JLabs/宇佐見:素晴らしいですね。そういうチャレンジをして、やろうと思ったことをいろいろ苦労しながらやって、すごいものを作り上げているという状況だと思います。
今後、こういう経験を通じて、さらに次のステップはどのようなアイデアとかプランとか、おありなんでしょうか。
Goolight/鈴木:やはり会社として、世界的なマエストロ小林研一郎(コバケン)さんのような素晴らしいオーケストラのコンサートなどは、社長の繋がりで以前から撮影などをさせていただいているので、(注4)プロのオーケストラさんが地域で演奏するような映像はいつか撮ってみたいと本当に思います。

(注4)
「コバケンとその仲間たちオーケストラin須坂」を4K映像で収録し全国放送!
https://goolight.co.jp/about/history/「コバケンとその仲間たちオーケストラin須坂」を
“炎のマエストロ”こと小林研一郎が率いる「コバケンとその仲間たちオーケストラ」が2019年8月、須坂市文化会館メセナホール30周年記念コンサートとして開催されました。Goolightでは完全4Kクオリティで収録、ケーブルテレビの全国統一チャンネルケーブル4Kで6月に全国放送されました。
Goolight/鈴木:あとは、今までは社長からいただいた指示やアイデアに私たちが「えっ?!」と思っていたんですけど、これからは社長が「えっ?!」と言うようなことを考えつきたいなと思っております。社長の発想を超えるアイデアがいつか出せればいいなと。
JLabs/宇佐見:ありがとうございます。
次はがらっとテーマが変わりますけれど、2016年から台湾向けのインバウンド事業、これはまた全然違う視点で行なっているそうですが、その内容について教えていただけますでしょうか。
3.台湾向けインバウンド事業
Goolight/丸山:長野県は台湾からのインバウンドが一番多いんですね。韓国や中国やヨーロッパ、アメリカ、いろいろあるんですけど、やはり台湾が一番多い。
それはいろいろな理由があって台湾の方が多いのですが、非常に親和性も高かったり、親日であったりということもあって、私たちもそれまでは台湾に全く縁もゆかりもなかったんですけれども、総務省の事業を使って海外にインバウンドコンテンツを発信して、そこでお客さんを集客する。
さらに台湾のいろんな見本市に出展して、国の予算であったり、県の予算などを協力いただきながら、はじめはヨチヨチ歩きの僕たちがやってきたことが、気がつくと8年連続でやってきたので、今、地域創造部の山岸部長はプロモーターとして、台湾でもいろいろなことが自力でできるようになりました。
これ自体は大きなビジネスでも、大きな利益を会社にもたらすものでもないのですが、社長として大切なことは、人的資源として8年間で僕たちは海外に対する免疫力もできて、台湾本土でのいろいろなプロモートの力がつき、あるいは海外のいろいろな業者やエージェントとも話ができるようになった。
ケーブルテレビというのは地域にクローズドでビジネスをしているというふうに捉えられているんですが、決してそうではなくて、そこに軸足はありつつも、やっぱり全国、世界にきちんと向き合って仕事ができるという一つの自信みたいなものになってきました。
制作チームも含め、あるいはバックヤードで経営企画の岩下部長などが経理的、管理的な部分もしっかりサポートすることで、今までと全然違ったスキームのビジネスなんですが、人的資源としての力というのはこの8年間で向上してきました。
これは社長として一番うれしくて、利益はまだまだこれからで、どうやって本当のビジネスにしていくかというのはこれからの楽しみです。
JLabs/宇佐見:山岸さんの具体的な苦労話と、そう、これからの思いを教えてください。

Goolight/山岸:私はケーブルテレビにお世話になって20年以上経つのですが、まさか入社した頃に台湾や海外に向けて情報発信しているとは思っていなかったです。ケーブルテレビ・イコール・ローカルというイメージでお世話になってたのですけれども。
それからいろいろ経験をさせていただいて、やはりケーブルテレビって地域のメディアで、一番地域を一番知っている存在であると思っていますので、それが海外で線を結んで情報発信するということは、海外にとっても地域のコアな情報を欲しがっていて、最近は特に台湾はリピーターが多いですし、日本のことをよく知っています。
日本の富士山、京都、そういったゴールデンルートと言われているところは、もう行き飽きている方がいて、より地方の誰も知らない地域を求めているので、ケーブルテレビはその地域の中でまだ見ぬ地域をよく知っているメディアです。
当社の事例を、また他のケーブルテレビでも横展開できるものかなと思っていますし、私たちも8年間やってノウハウも培ってきていますが、社長から言われているのは、本当にビジネスにしていこうというミッションに、次はステップアップかなと思っています。
手前みそかも知れませんが、台湾の地上波の民視(民間全民電視公司)という地上波放送局とは本当に懇意にさせていただいていて、多分日本の誰よりも台湾地上波の放送枠を確保できるのは私ではないかと思っています。
さらに、総務省の補助事業って、結構細かい事務手続で大変な箇所がありますが、その部分は岩下部長が誰よりも知っているので、多分この二人でコンビを組むとコンサルティングもできると思います。
JLabs/宇佐見:そうですね。今のコンテンツを作られて、素晴らしい地域のコンテンツを作られている話と、グローバル展開というのを掛け算すると、相互に台湾とコンテンツの交流みたいな部分。なんかすごい夢が膨らみますね。
それが地域にどう落ちるかというのが一つの経営の課題だと思います。
4.アーバンスポーツ スラックラインの取り組み
JLabs/宇佐見:Goolightさんはまた新たな分野として、アーバンスポーツの方もいろいろやられていると伺いますけれども、今までどのようなことをされてきたのでしょうか。
Goolight/丸山:僕たちはスラックラインというまだマイナーなスポーツ、年配者には『このスポーツ初めてだな』みたいな感じですが、恐らくいろいろな意味でこれが主流になる可能性があると思っています。
Goolightのエリアのひとつ、小布施町というところで非常に人気が高かったり、たまたまそこでまだマイナーではあるとはいえ、世界チャンピオンが生まれてきました。
スラックラインというロープの上でパフォーマンスを繰り広げて、それを採点するというものを、2017年からワールドカップを開催して、そこで2019年にはKDDIさんと5Gの実証実験も実施して(注5)、アーバンスポーツだけで終わっているのではなくて、そこで地域課題的なものや、先進的なソリューションもケーブルテレビなので、ちょっと味付けをして、2回連続でワールドカップを実施しました。
(注5)
KDDIとGoolightがスラックラインW杯で5G実証実験
https://goolight.co.jp/about/history/スラックラインワールドカップジャパンにおいて

2019年9月15日、KDDIと長野県のケーブルテレビ局Goolightは長野県小布施町で開催されたスラックラインのワールドカップ「2019 スラックラインワールドカップジャパン・フルコンボ」の決勝戦の模様を5G回線を使い伝送する実証実験を実施した。
Goolight/丸山:1万人ぐらいの町に3万人ぐらいの観客が来て大変盛り上がりまして、これはケーブルテレビの可能性として一つアリなんじゃないかな、と思っていたのですが、コロナとかいろいろあったので、ワールドカップ的なビッグゲームはしばらくできなかったんです。
今年ようやく落ち着いてきたということで、実は先週(1月26日)、ジャパンのプロリーグ第1戦を小布施町で開催して、これから東京で第2戦目、愛知で第3戦目をやって、今年9月にワールドカップを久々にご当地を見据えて開催することにしていて、海外の選手と日本の選手のトップ16人ぐらいが地元に集って、文字通り世界のトップを決める大会を共催します。
主催者のメンバーの一社として中継放映権を担いながら番組の配信と運営をしていくというのが今の山岸や鈴木やうちのメディアチームでして、Goolightが全社的にしっかりバックアップしていく。
スラックライン推進機構というスポーツ団体があるのですが、そこもまだヨチヨチ歩きの部分がありますので、バックヤードの管理体制みたいなものもうちの会社で担っていくということで、スラックラインがどう化けるかわかりませんが、一応目標としては、しかるべき段階でオリンピックの正式種目になるべく、いろいろな体力をつけていく後押しをGoolightができたらいいなというふうに思っています。
JLabs/宇佐見:ありがとうございます。
2019年、丸山社長のそういうお話に賛同して、私も前職の通信事業者でローカル5Gでスラックラインをどこまで楽しめるかということで発案したのが超低遅延で振動をそのまま伝えようということで、選手があちらでビヨーン・ビヨーンとやっているのをこちらの座席でビヨーン・ビヨーンと感じるようにしたんですけど、ちょっと滑りましたかね。
こういう新しいスポーツの楽しみ方ってまだ無限に可能性があるんですよね。
あの時はそれだけでちょっと残念でしたけれども、今スノーボードとか、ジャンプとかって我々世代では絶対体験できないことをいかに感じられるかというのは、画面を見ているだけじゃない、いろいろなテクノロジーの使い方があると思います。
ついつい自分の方で盛りあがりましたけど、ありがとうございました。
でも、2025年、またワールドカップということで、新たな次の世代のテクノロジーが何できるかっていうところも期待したいと思います。
Goolight/丸山:あれから7年、8年経っているので、あの時はなかった生成AI、ああいう知的レベルの高いコンピューターがどのような審査基準でジャッジしていくかとか、オーディエンスの「ワー」っていう歓声をどう数値化していくかっていうのは当時実験的に多少やったんですけれど、今回やっぱりそういったものをしっかりすることによって、主観的な評価しかできないスポーツ競技がある意味客観的な評価をしっかり担っていくというのは、次のステップとして非常に大事なので、ぜひまたケーブルラボさんの支援もお願いしたいなと思います。
JLabs/宇佐見:2000年ぐらいから、フィギュアスケートとか体操はAIというよりも、画像分析して選手の動作を評価していて、ちゃんと回り切っているのかどうかというのが人間じゃなくて機械による判定になっています。
ただ、スラックラインはもっと複雑というか、何がすごいのかどうかというのを含めて、AIが入ってくることがあるんじゃないかなと思います。
5.Web×IOTメイカーズチャレンジ
JLabs/宇佐見:次、これが一番聞きたいことなんですけれど、Goolightさんはいろいろなリアルイベントをされていると思います。聞くところによると、ちょうど明日(2月8日)から『Web×IOTメイカーズチャレンジ』(注6)をこの場で開催されると聞いております。
そのご説明と、関わってきた背景等々ですね。あと、社員の皆さんも結構苦労みたいなところも含めてお伺いできればと思います。
(注6)
『Web×IoT メイカーズチャレンジ PLUS in 信州』をbotaで開催
https://goolight.co.jp/about/history/『webxiot-メイカーズチャレンジ-plus-in-信州』をbotaで開催

botaと塩尻インキュベーションプラザの2会場をオンラインで結び、IoTシステム開発のスキルアップイベント『Web×IoTメイカーズチャレンジPLUSin信州』を開催しました。Raspberry Pi(ラズベリーパイ)と呼ばれるボードコンピューターの講義とアイデアソンを踏まえてチームごとに制作を進め、発表が行われました。
Goolight/丸山:これは宇佐見さんが一番のお得意というか、ご自身でも思いがあるイベントではないでしょうか。
なかなか『Web×IoTメイカーズチャレンジ』というのはケーブルテレビが当初は関わっていなかった。プログラミングができる子であったり、そういうところに興味の高い子というものと、ケーブルテレビの業界というのは若干距離感があったんですね。
ましてや僕たちみたいな地方の中小の事業者に対して、そういう技術者がきちんと毎年採用できるかというと、なかなか難しい。4、5年前に『Web×IoTメイカーズチャレンジ』のお話があったときに、そういったものを知ることによって、若手社員のスキルアップになったり、いろいろ開発をしたり、ミッションをクリアしていくものが地域の課題に非常に貢献するものであると知りました。
ケーブルテレビはスポンサードであったり、人的協力であったり、ファシリテーターの派遣であったり、いろいろな貢献ができる。
今年は会場を提供しているのですが、長いスパンで社員のスキルアップと、大きく言えばインターンシップの一つとして、地域の若手の参加者と接点を持つことによって、優秀な人材を確保できたらいいなというのが経営者的な一つの目線でもあります。
ただ、それだけが突出してしまうといけないので、この中で場所を提供して、いろいろな方々とうちの社員を介すことによって少しでもスキルアップさせていくっていうようなところが今の目的の一つです。
僕たちも今まで関わったことがなかった大学の先生だったり、技術者の方と関われることになったのは、この『Web×IoTメイカーズチャレンジ』に参画して、長野会場をお手伝いするようになってから幅が広がりました。そういった面で、これは良かったなと思っています。
JLabs/宇佐見:どうもありがとうございます。実施側の苦労話はいかがですか。
Goolight/山岸:社長がお話ししたとおりですけれど、余談で言うと、社員もいろいろな個性があって、特にうちの社員の中でも技術を率先してやる社員がいるんですけれど、この『Web×IoTメイカーズチャレンジ』に関わったとき、ものすごく生き生きしているんですよ。社員のモチベーションアップというのは目に見えてわかりました。
Goolight/丸山:まだまだごく一部だけですが、一部の社員は本当に目の色が変わって、率先的に会社の業務以上にやりますから、そういうモチベーションにはなっていると思います。
ケーブルが地域で徐々にこの関わり方をやめてきているので、ちょっと残念です。
そこはまたラボを中心にそういう側面を出してもいいかもしれません。
JLabs/宇佐見:この活動というよりも、この分野をもう少しケーブル業界としてサポートする、あるいは関わっていけるかっていうのは、よく考えなければいけないと思っています。
6.人材の確保と育成
JLabs/宇佐見:最後ですけれど、ケーブル局での人材の確保とか、今日お聞きしたいろいろな施策を実現する人材育成はどんどんやられていると思います。
けれど、広い範囲での人材育成となると、かなり苦労もあるのではないかというふうに思います。
これは全国のケーブルテレビ局共通の課題なんですが、いつもいろいろなところで聞かせていただきますけれども、何かお考えとかあれば、教えてください。
Goolight/丸山:人材の確保、雇用というのはこれから最大の経営課題になっていくもので、欲しい人材がしっかりと確保できて、その人材がいきいき働いていける職場づくりというのは、どの経営者も最優先に考え、取り組んでいかれるでしょう。
地方の中小の事業者に学生がしっかりと来てくれるというのは、今なかなか難しいので、学生に限らずキャリア採用でもいいんですが、これら採用というのはこの数年間、私たちも苦労をしています。

男性、女性というと、どちらが良いとか悪いとかという話ではなくて、現実的に男性の雇用がなかなか難しくなってきていて、優秀な女性社員が毎年入ってくれているんですが、男性は新卒にしろキャリア採用にしろ、みんなどこにいっちゃってるんだろうと思うぐらい応募数が少ないです。
女性で優秀な社員が毎年入社しているので、今や女性がプロモーションやメディアでは中心になっています。気がつくとbotaができてから、女性社員が多い職場になっています。業態がどんどんどんどん変わっていく中で、おそらくプロモーションだったり、地方自治体との連携みたいなものは、むしろ実力を発揮できるのは女性なのかもしれません。
そして、まだまだ田舎の私たちのような中小事業者に厳しいのですが、「うちの会社でこれをやりたいんです!」という人を採りたい。まず「Goolightで働きたいんです。Goolightで皆さんがやっているような仕事を一緒にやりたいんです」という人をしっかり採用できるようにしていきたいなというふうに思っています。
JLabs/宇佐見:ありがとうございます。私から見る丸山社長の人材に対する思いは、本当に社員一人一人の個性を見て育てているから、発せられるんじゃないかと感じました。
本日は『Challange 2027』から、シティプロモーション、インバウンド事業、アーバンスポーツなどなど、さまざまなお話を伺うことができました。
株式会社Goolightの丸山社長はじめ地域創造部の山岸部長、鈴木課長や撮影スタッフの皆様、ありがとうございました。
