スカパーJSATと伊藤忠、カタールにSAR衛星画像を用いた海上オイル漏れ検知サービスを提供(23.6.19)

スカパーJSAT(株)(東京・港区、米倉英一社長)は、 伊藤忠商事(株)(東京・港区、石井敬太COO)と、カタール環境省(Ministry of Environment and Climate Change 以下、カタールMECC)に対し、SAR(※1)衛星画像を活用した海上オイル漏れ検知サービスの提供を開始した。


全世界で、石油タンカーによるオイル流出事故は1970年代以降、約2,000件報告されている(※2)。特にカタールを含む、多国籍船舶が多く航行するペルシャ湾沿岸では、オイル漏れ対応策を長年検討しており、環境保護の観点からも、船舶から漏れ出したオイルを沿岸部への着岸前に可能な限り早く検知し対処することが重要だ。


本検知サービスは、スカパーJSATの提携先である衛星事業者大手のKongsberg Satellite Services AS(ノルウェー・トロムソ、以下「KSAT」)、およびKSATのパートナーが保有する地上局にて取得したSAR衛星画像を用いて、海上のオイル漏れを検出する。その後、船舶から発信されるAIS(船舶自動識別装置)情報※3と組み合わせて解析し、オイル漏れのあった船舶を特定することが可能。
スカパーJSATおよび伊藤忠商事は、共同で本サービスの提案活動を進めてきた。今般、様々な衛星を組み合わせた幅広い海域の観測が可能である点や、デイリーおよび緊急時の観測レポートが評価され、カタール環境省でのサービスの導入に至った。2社が共同で衛星データを活用した海外向け解析サービスを提供する、初めての事例となる。今後、本サービスを継続的にカタールへ提供することに加え、同様の需要がある海域の国や企業でも利用できるように展開していくことで、沿岸部の海水淡水化施設や発電所などの重要施設をオイル漏れによる被害から防ぎ、海洋環境を保護していく。


スカパーJSATおよび伊藤忠商事は、今後も社会と環境の持続可能性への貢献と健全な事業活動による社会課題の解決を通じて企業価値の向上を追求し、人々の暮らしに安心や快適さを提供することで持続的な成長を目指していく。

※1:SAR :合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar)の略。地表にマイクロ波を照射し、反射して返ってきた信号を分析することで地表の画像を得るレーダー。雲や噴煙を透過し、昼夜や天候に関係なく地表の状況を把握することができる点が特長。
※2:International Tanker Owners Pollution Federation より引用。
※3:AIS 情報:船舶自動識別装置(Automatic Identification System)の略。船舶自動識別装置から発信する自船の識別符号、船名、位置、針路、船速、行き先などの情報。衝突防止等海洋安全の観点から、洋上を航行する船舶同士がこれら航行情報を相互し、またSOLAS条約(海上人命安全条約)によって定められる対象船舶への搭載が義務化されている。このため、AIS装置は常に電源を入れておく必要があり、停船中であっても、自船の船舶情報を発信し続けることで、当該船の居場所がわかるシステムになっている。

図1: カタール MECC 向けオイル漏れ検知サービスのイメージ画像
図2 :オイル漏れ画像(左)、 AIS( 船舶自動識別装置 情報(右)